九校戦編
Episode27:ルアー
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、隼人」
なんで、雫は赤い顔して俺の脛を蹴ったんだろう。というかすごく痛い。それなりに鍛えてるはずなのに。まさか魔法使った?
「なんか、ごめんね? 雫」
「別に。鈍感なのは承知してる…」
「雫、ファイト!」
「?」
結局、二人の話についていくことができなかった俺は頭の上に疑問符を浮かべていることしかできなかった。
☆★☆★
そうしている間に時間が経ち。
今は発足会の真っ最中。会はつつがなく進み、今は選手一人一人の紹介だ。プレゼンターは勿論のこと会長。
紹介を受けたメンバーは、並んでいる列から一歩出て、競技エリアへ入場するためのIDチップを仕込んだ徽章をユニフォームの襟元につけてもらう。
その役目は、やはりと言うかなんと言うか、深雪さんだった。
選手で41名、その中から深雪さんと会長を抜いて39名。物凄く面倒くさそうなのだが、深雪さんは流石と言うべきか。その淑女然とした笑みを崩さずに一人一人丁寧に徽章をつけていった。
『一年B組。九十九隼人』
マイクを通した呼名に、俺は一歩進み出て一礼した。
「がんばってくださいね」
「はい、ありがとうございます」
にこり、と微笑んで息がかかるくらいに近づいてくる深雪さんの顔に自然と顔が紅潮して鼓動が早くなってしまう。それでもなんとか平静を保って、深雪さんの激励に答える。
「……!」
隣に立っている雫からムッとした雰囲気が伝わってくるのと同時に、先ほどのように足を踏みつけられる。けれど、彼女自身の体重が軽いためか、さほど痛くはない。
よくわからないけど、これは俺が悪いのだろう。大人しく、踏まれていることにする。
(ん…?)
なんの気もなしに生徒席のほうに目を向けてみると、なんと前から三列目、いつもなら一科生が陣取っているはずの最前列に、見覚えのある人たちがいて、こちらに手を振っていた。
勿論、それはエリカ、レオ、美月、そして、俺の古い友人である吉田幹比古だった。そしてその四人の周りにエンブレムがない生徒がたくさんいるから、あれは恐らくE組の人たちだろう。達也が選ばれたから、勇気を出して、もはや悪しき習慣となっている一科生と二科生の枠組みを壊してきたのだろう。
いい人たちだなぁ。と思いつつ手を振り返す。
少し暖かな気持ちになって、ふと横を向くと。少し離れたところに、顔をこれでもかというほどに蕩けさせた深雪さんの姿があった。なるほど、達也の番ですね、分かります。
最後の生徒−−達也の襟元に徽章がつけ終えられたとき、生徒席の前列から、具体的にはE組の人たちから大きな拍手が鳴りはじめた。
ただでさえ、達也という二科生が九校戦のエンジニアメンバーに選ばれたことで一科の人たちの気が立って
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