九校戦編
Episode27:ルアー
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、足を滑らせた私を助けるためにクッション代わりとなってくれたのだろう。私の背中と後頭部に回された先輩の両手が、意外と大きいことに気づく。体にピッタリと張り付くスクール水着だからか、先輩の体温が直に伝わってきて……
「エリナ、大丈夫?」
そう、心配顔で覗き込まれてしまっては、私の精神が持つはずもなかった。ただでさえ風呂場に突撃するなど悶絶モノだったのに、ほぼ裸の状態で密着してしまったら、羞恥がピークに達してしまうのは仕方のないことだと思う。しかもそれが、大好きな人であったら尚更だ。
「えっ、エリナ!?ちょっと、大丈夫!?」
先輩の焦る声とガラッとなにかが開かれる音を最後に、私は意識を手放した。
☆★☆★
これは一体どういう状況だ、と浴室の扉を開いたスバルは自問した。
まだどこかを洗っている途中だったのか、お湯を放出するシャワー。長い時間が経って、湯気が充満した空間。そこで、倒れて真っ赤な顔に困惑の表情を浮かべてこちらを見る隼人と、その上にのしかかっている、いつか見たまだ中学生くらいの少女。
取り敢えず、訳がわからなかった。
「……」
「あ、いや、姉さん…? こ、これには色々と深い訳が……」
無言でいることに不安を覚えたのか、たどたどしく弁明しようとする隼人。
だが、上にエリナを乗せたままのため説得力などまるでない。スバルのとった行動は簡単だった。
「−−−ったぁ!?」
ゴツン、と鈍い音が浴室に響いた。涙目になって見上げれば拳を振り下ろした状態の姉の姿。長く垂れた前髪のせいで表情が窺えないが、怒っているのは間違いない。
なぜ怒っているのかわからないまま、隼人は死を覚悟した。
☆★☆★
「いたた…」
痛みを訴えてくる頬を撫でて、隼人は自分のベッドの上で寝ているエリナを見やった。
時刻は既に夜の0時を過ぎたところ。電気を消して薄暗くなった部屋の中でも、彼女の緑がかった銀の髪は輝きを失わなかった。
ゆっくりと、隼人の手がエリナの頭を撫でる。サラサラとした銀髪が指に絡まって、少しくすぐったそうに笑みを零す。
「…そういえば俺、エリナのことなにも知らないな」
隼人が彼女とちゃんとした形で会ったのはごく最近、沙織の店でのことだ。それより以前は、恐らく彼女の魔法で姿を変えて隼人を追い回していた。
(恐らく、その魔法は九島家の仮装行列なんだけど…一体なんでそんな魔法が使えるんだ?)
九島家は十師族の一つにして、かつて世界最強・最巧と謳われた九島烈が支えている家だ。
その烈が編み出した認識改竄魔法、仮装行列。特別秘伝となっているわけではないようだが、おいそれと無関係の者に教えていい魔法でないのは確
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