九校戦編
Episode27:ルアー
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中を疾走する一つの影。
その影を認めて、スバルは慌てて体を伏せた。すぐ上を、加速魔法の恩恵を受けた小石が尋常ではないスピードで過ぎ去っていく。その威力は、森の木々に空いた風穴が雄弁に物語っている。正直、躱せたのが奇跡に近いくらいだ。
確かに手加減はいらないと言ったが、下手をすると死ぬのではないかと内心焦るスバルを余所に、影−−、隼人はスバルに照準を定めさせないように走り回り、撹乱する。そして撹乱しつつ飛来する飛び道具。正直、厄介なことこの上なかった。
もともと、隼人は魔法無しでもかなりのスピードを持っている。それに、自己加速魔法を使われてしまえば、いくらスバルとはいえそう簡単には捉えられない。
決着は、早々についた。
「っ!?」
隼人の手の一振りで、地面が両断される。バランスを崩したスバルは碌な抵抗もできず、その首筋に砂鉄の剣を突きつけられて溜息をついた。
「はい、降参よ」
「ふー、ありがとう姉さん」
汗を拭って息をつく隼人に対し、スバルは涼しい顔をしており、疲労した様子がない。
それもそのはず。今回の模擬戦で、隼人は自身の得意な体術と魔法を織り交ぜた接近戦でのヒット&アウェイ戦法ではなく、慣れない遠距離からの魔法のみの戦法に変えたのだから。
色々と考えながら戦うのは意外と体力と精神力を消耗するものだ。しかし、その分得るものは確実にあっただろう。
「あなたがモノリス・コードの時の戦術訓練したいって言うなら、手伝うわよ。そこまで酷い姉じゃないでしょう?」
「そうだね、これで勝手に料理することと暴力をなくしてくれれば文句はないけど」
「一言多いわよ」
「ごふっ!?」
容赦無く鳩尾に突き刺さった鞘に、隼人は結構本気で咽せることとなった。が、その後この二人が喧嘩を始めることはなく、立ち直った隼人とスバルは一緒に修行場所となっている山から降り始めるのだった。
☆★☆★
「ふはー…」
場所は変わって、九十九家浴室。模擬戦のあと、汗をかいたスバルと隼人は順番に風呂に入ることにした。丁度、急な依頼がない限りは外出する予定はないため、今日はこのままゆっくりと過ごす予定である。
隼人に、ゆっくりと過ごせる平穏な時間は大体訪れないのだが。
(モノリス・コードかぁ…近接格闘が禁止されてるのは少し辛いよなぁ)
頭を洗いながら、これから先の戦いへ思いを馳せる。
隼人の基本戦闘は雷帝からの徒手格闘術。なのだが、やはり九校戦は魔法実技を競い合う大会のため、近接格闘は認められていない。また、相手を死に至らしめるほどの魔法も禁止されているため、隼人の戦術のレパートリーはガクンと減ってしまう。唯一、ワイヤーを使うことができるのがせめてもの救いか。
仕方な
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