九校戦編
Episode27:ルアー
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過していた。これ以上はオーバーワークだと判断を下した隼人は、次の一手を最後とした。
力を失っていた森崎の瞳に、闘志が宿る。
ただ、目の前の強敵を倒すために。超えるべき壁を、超えるために。
だらりと下げていた腕が、前触れなく隼人に向けられた。刹那、魔法式が展開され、広範囲に及ぶ圧搾空気の砲弾が隼人を飲み込んだ。
「おおおおお!!」
そして、隼人が風槌を防ぎ切った直後、更に圧縮された空気の銃弾、凡そ10発が隼人を襲った。
「合格、かな…」
森崎の最後の精神力を振り絞って放った十発の圧縮空気弾。間違いなく、彼にとっての最高魔法だと断言できる魔法だ。
(これなら…!)
閉じそうになる瞼を懸命に開いて、魔法の行方を見る。
だが、森崎が放った渾身の弾丸は、隼人の目の前から突如吹き荒れた竜巻によってすべてを掻き消された。
(ダメ、か…やっぱり僕じゃあ、足元にも及ばない…)
最後に苦笑いを漏らして、森崎はその場に倒れた。
☆★☆★
「……ん」
「あ、起きた」
夕暮れの医務室。自分でも少しやりすぎたと反省した特訓後、精神的疲労で意識を失っていた森崎くんは純白のベッドの上で目を覚ました。
「健康状態は問題ないって医務室の先生は言ってたけど、大丈夫?」
心配そうな顔で覗き込むと、森崎くんは頷くことで問題ないことを伝えてくれた。
よかった、と言ってベッドの傍らにある丸椅子に座る。
「……僕は、弱いんだな」
ポツリと、森崎くんが呟いた。
悔しさが滲む表情で、けど、納得したような声音で。
プライドの高い森崎くんが、自分の弱さを認めた。ならば、俺にできることは一つだ。
「うん、そうだね。君は弱い」
現実を突きつける。
それが今の俺にできる最良のことで、森崎くんに一番必要なことだと思う。
スッパリと言い切った俺の言葉に、森崎くんは悔しそうに唇を噛んだ。
「干渉力、キャパシティは平均。処理能力は、常人に比べれば早い。それに加えて、君にはクイック・ドロウという技能がある」
そう、彼の強みはそこだ。誰よりも早い魔法の発動。だが、
「けど、その程度だ」
「っ!」
そう、幾ら森崎くんがこの学校の中で優秀だとしても、もっと広い世界に行けば、彼を超える能力を持っている人は山ほどいる。
「君のその力はこの学校内でしか輝けない。君程度の魔法発動の早さでは追いつけない。君程度の干渉力では貫けない。君程度のキャパシティでは、対応できない」
「…そう、だな。僕は、どうやら自惚れていたらしい」
自嘲気味に言う森崎くんの顔はどこか吹っ切れたようなものだった。
もう、大丈夫かな?
「でも、そんな卑下するほどで
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