第1部
第3話 我、疲労困憊ス
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凛々しさの中にあどけなさの残る童顏は、間違いなく彼そのものだ。
だが、今だに信じられないのも事実だ。
「……何か用事?」
「いや、予想以上に暑くて汗かいたから、ちょっと風呂に行こうかと思って。
そしたら起床時間まで時間があるのに、ここから音が聞こえたから……」
「…………そう」
笑い方も、笑いながら後頭部を掻く仕草も、1年前までこの鎮守府に居た少年と全く同じ。
その様子が、更に加賀の混乱を増長させた。
「……私は、まだ貴方を信用して無いの」
「……」
「貴方への嫌疑も晴れたわけじゃ無いわ」
「分かってる。 俺自身、そんなにすんなりと信じて貰えるなんて思ってないから。
異世界の22年後から帰ってきました、何て言ったって……俺だって荒唐無稽な与太話だって相手にしないだろうし」
彼は……一葉は、そう言って自身の髪を縛る紐を解き、加賀に差し出した。
髪を結わえていたその紐には、《カ》と書かれた小さな飾りがついている。
「返すよ、こいつには何度も救って貰った。
けどもう、自分の身は自分で護れるから」
一葉の差し出した紐を、恐る恐る受け取った加賀は、目を僅かに見張って驚いた。
それは間違いなく、1年前に自身が少年の一葉に上げた、飛行甲板を削って作った髪留めだったからだ。
「今すぐ信じて欲しいなんて言わない。
けど、今度は……」
彼はそう言うと踵を返して入り口へ進んでいく。
「今度は、俺が護るから」
精錬場から出て行った彼の背中をずっと見つめるしか出来なかった加賀を正気に戻したのは、起床時間のラッパの音だった。
???
6時間後
第1024鎮守府 第1講義場
夏場の灼熱に燃え盛る太陽が頭上に登る頃、第1024鎮守府のほぼ中心地に置かれた中央棟の一角、第1講義場。
この第1024鎮守府のほぼ全ての艦娘、約30隻の艦霊がひしめき合うこの講義場は、彼女達の雑談や憶測などで賑やかになっていた。
その内容と言うのも、専ら十数時間前に現れた自分達の弟分と、弟分が率いてきた未知の艦隊についてである。
「あの白い戦艦、火砲の大きさが異常よね」
「大きさも大和型の1.5倍らしいわよ? 300mはあるって乗組員の人が言ってたし」
「300m??」
「あのもびるすーつ、とやらも大きかったな…目測だが20mはあった」
「あの手の長いロボット、なんだか可愛いかったのです」
「そうかしら?」
ガヤガヤと騒ぐ艦娘達を、部屋の1番後ろの壁に寄りかかって見ている男が居た。
この鎮守府の主、神宮司定晴だ。
「なんとか間に合ったな」
「皆で手分けして準備しましたから、皆興味深気でしたし…」
「とは言え、良く資料を開示しようと思ったな、一葉の奴」
「彼等の
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