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或る皇国将校の回想録
第一部北領戦役
第八話 川は深く・対岸は遠く
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上苗橋は既に爆砕した。
そして、近衛工兵中隊の協力の下、築城作業を行っている。
此方は今日中に、遅くとも明日の午前中には完成するだろう。
そして敵は二十日の昼以降に到着する為、我々は多少の時間の余裕を得られた事になる。
そこから三日間の時か「大隊長殿!転進支援本部より伝令です!」
 当番導術兵の金森二等兵が行き成り身を起こして言った。
何事か、と視線が集まる中で二等兵は目を閉じ伝令を始める

「発・転進支援隊本部 宛・独立捜索剣虎兵第十一大隊本部
真室ノ穀倉ヲ焼却ノ成功ヲ確認スルモ
小隊救助ニ派遣セシ巡洋艦〈大瀬〉ハ負傷シタ竜士ヲ救助シ帰還シタ為、真室残留兵ノ救助ニ失敗ス。
尚、転進作業モ天候不良ノ為ニ1日ノ遅延ヲ必要トスル。
貴隊ノ武運ヲ祈ル」

「――喜ばしい知らせだ。
真室の穀倉は敵の手に落ちる前に焼かれている。
兵藤少尉達の無事は祈るしか無いがこれで迂回され、直接 鎮台主力を叩かれる恐れは無くなった。
我々は四日分の時間を稼げば良い、敵は疲労し兵站も崩壊している事が確実となった。
けして不可能ではない」
 妹尾少尉が懸念を表し言う
「ですが、距離のある北美名津は無理でも我々の後背を突く事は可能です。
大隊規模以下の騎兵でも挟撃にあったら危険です」

 ――よしよし、妹尾少尉も意見を言う程度には割り切っているな。
 豊久は内心安堵しながらこれに応える。
「有り得る。だがその場合は砲で牽すれば向こうの兵站が続かなくなる。
輜重部隊までと化させるのは骨だからな。
念の為に迂回経路として予想される側道にも壕を作った。
そこに予備を投入し砲と連携すればしのぎ切れるだろう。
幸い真室大橋にて我が軍の置土産である平射砲を六門接収し、我が大隊が保有する砲は27門、砲兵大隊並だ。
補給も転進支援本部及び実仁准将閣下の御厚意で滞りなく行き届いている」
 ――問題は導術兵達だ。
表面上は笑みを浮かべながら豊久はちらりと導術士達を見る。八人いるが、疲労の色は濃い。
 この二日間は可能な限り優先して休ませているがこれからの四日間、彼らを酷使しなければならない為、将校達の最大に不安材料となっていた。

「案ずるな。我々の戦術的な有利は多い。
第一に敵の兵站の破壊の成功。
第二に現在の状況で望みうる限り最厚の築陣の完成。
第三に導術――君達による情報伝達で戦力を隠蔽したまま連携を取れる事だ」

 休みながらも本部に詰めている導術兵達は大隊長に覚悟を決めた目で肯く事で応えた。
 将校たちも幾らかは可能性を見出し、顔色が良くなっており、士気は堅調であった――漆原以外は。虚ろな目をして腑抜けている彼を見ると新城大尉の懸念通りの結果になってしまったようであった。

「質問は無いな。――よしでは解散だ。各
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