叶わない夢、割れない氷
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そして、ヴェルハルトと名付けられた飛竜は、主である少女の声に反応してその口を開く。
大きく開かれた口から放たれるのは、全てを焼き尽くすような紅蓮の咆哮。
その炎は床を焼き、壁を駆け、敵であるライオンへと向かう。
「レオヴィニラ、回避しなさい」
ライオンに命じているのは、サルディアとは別の召喚魔導士だった。
彼女の名はフラウ。
血塗れの欲望のギルドマスター直属部隊、暗黒の蝶に所属する、“処女宮”を司る少女だ。
「ガウッ!」
一声吼え、レオヴィニラと呼ばれたライオンは地を蹴る。
そしてそのままヴェルハルトを飛び越え、サルディアの目の前に着地した。
サルディアの目が見開かれる。
「グルアアアアアアッ!」
「ギャウッ!」
が、レオヴィニラの攻撃はサルディアに当たるどころか、攻撃する素振りさえ出来なかった。
ヴェルハルトの長い尻尾が思いっきりレオヴィニラの横っ腹に直撃したのだ。
尻尾攻撃とサルディアが呼ぶその攻撃法をモロに喰らったレオヴィニラは壁にその身を直撃させ、目を回す。
それを見たフラウは溜息をつき、魔法陣にレオヴィニラを吸い込ませる。
「さすが“オントス・オン”ってトコかしら。百獣の王も、飛竜の王と評されるデュプリケーターの前じゃ子猫同然ね」
「そこ、退いてもらえないかな?私は私の主のお姉さんを助けに行きたいの」
「それは無理な相談ね」
妖艶に微笑むフラウに、サルディアは腰に手を当てながら呟く。
その顔には微笑みこそあるものの、その笑みは普段ギルドで見せているような優しいモノではなく、どちらかといえば冷酷さを覚える笑みだった。
「私は血塗れの欲望の処女宮。貴女の敵なの。倒れでもしない限り、ここを退く気はないのよ?」
クスリ、と微笑む。
右太腿に刻まれた、美しい模様のようで見る者全てを戦慄させるその紋章は赤く染まり、長すぎるんじゃないかと思う程に長く伸ばしたワインレッドの髪は、膝裏辺りで毛先を揺らしている。
体のラインをくっきりとさせるミニの燕尾服調ワンピースを纏い、頭にやや大きめのシルクハットを被ったフラウは、シルクハットの鍔を右手で握り、芝居がかったお辞儀をした。
「本日は、我が三日月曲馬団にようこそ御出で下さいました」
頭を上げ、微笑む。
妖艶に、冷酷に。
それが己の目的の為なら手段を択ばない人間が浮かべる笑みだという事を、サルディアは知っていた。
自分の知るとある少女も、それに似た笑みを浮かべていたから。
「お客様の命の最後まで、どうぞお楽しみくださいませ」
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