叶わない夢、割れない氷
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出す。
が、パラゴーネは全く動じず、左手を矛の柄から離して握りしめた。
「重力操作、圧迫!」
誰にでも出来るような、単純な動き。
だが、その単純な動きで重力を操り、エルザの剣を曲げたのが天秤宮を司る彼女であり。
今もたったそれだけの動きで、グレイの氷の盾を―――――粉砕した。
「なっ・・・」
「私は天秤宮のパラゴーネ!何であろうと、我が支配下に置かれた重力の前では全て粉砕する!」
「がああああっ!」
続けてパラゴーネは右腕を薙ぎ払う。
それに合わせて淡い桃色の光が舞い、グレイを包む。
そのまま先ほどの動きに合わせてギュイン!と右に引っ張られ、その光に包まれるグレイも引っ張られるように壁に叩きつけられた。
「って・・・」
「グラビティメイク “雷神鎚”!」
「うおっ」
痛みに顔を顰めている間にも、パラゴーネはその手からハンマーに比べると柄の短い鎚を生み出し、グレイ目掛けて振り下ろす。
それを床をゴロリと転がる事で回避し、グレイは立ち上がった。
パラゴーネの後ろの巨大砲台は、砲口に淡い桃色の光を集めている。
「つか、それならその術とやらを使えばいいじゃねーか。ウルは溶けちまったが、水になって海に流れてるんだからな」
「・・・愚かな事を」
先ほどの雷神鎚によって床に開いた穴にチラリと目を向け、グレイは言う。
が、パラゴーネはそれに対して「おお!その手があったか!」と驚く訳でも「そんなのとっくに試したわーっ!」とキレる訳でもなく、「何言ってんだコイツ」と言いたげに呆れた表情で首を横に振った。
「海は範囲が広すぎる」
「は?」
「水溜り・・・湖サイズならまだ問題は皆無だけれど」
意味が解らない、と眉を顰めるグレイに、パラゴーネは呟いた。
「この世界において海がどれほどの面積を誇るか、お前は解釈しているの?」
竜とライオン。
正確には飛竜と、派手に飾られたライオン。
飛竜の方は白地に赤い模様が走っており。
ライオンの方はサーカスにでも出るんじゃないか、と思う程に飾られていた。
「ヴェルハルト!」
飛竜を言葉と魔力で操る少女―――――サルディアは、己の魔法である祝福の導き手を用いて召喚した『デュプリケーター』と呼ばれる種族の飛竜、『ヴェルハルト』の名を叫んでいた。
「大丈夫、そのまま―――――今!」
何をしろ、とは言わない。
ただサルディアは、ヴェルハルトにタイミングを命じる。
否、本人は命じているつもりはない。
タイミングを“教えて”いるだけだ。
「グガアアアアアアッ!」
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