暁 〜小説投稿サイト〜
まぶらほ 〜ガスマスクの男〜
第八話
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げな宮間の姿が。


「その女はなんですか! ひどいですっ、わたしというものがありながら!」


「俺が誰と親しげでも君とは関係ない」


「それが妻に言うことですか!? 浮気者は嫌いです!」


「嫌って結構。むしろ嫌ってくれ。それと何度も言うようだが君を妻に迎えた覚えはない」


「なんでそんなこと言うんですか! ひどいです! それにまだそんな物をつけてるんですか! いい加減、顔を見せてくださいよ!」


 ああ言えばこう言う……。回線が捻じ曲がってるのか、俺の言葉は通じていないようだ。


 本当に疲れる……。


「……わかった。そんなに見たいというなら見せてやろう」


「本当ですか!?」


「式森様……?」


 喜色の笑みを浮かべる宮間と怪訝な顔のリーラ。


 リーラには黙っているように目配せをすると、一つ頷いて引き下がってくれた。


 察しがよくて助かる。


「じゃあ後ろを向いていてくれるかな? ちょっと恥ずかしいんだ」


「もうっ、しょうがない和樹さんですね♪」


 機嫌がいいのか素直に後ろを向く宮間。間髪いれず、彼女の首筋に手刀を入れた。


 崩れ落ちる宮間を冷めた目で見下ろす。


 ――後で出荷しないと。


「……個性的な方ですね」


「だろう……? 個性的過ぎて困るくらいだ」


 宮間がどんな女か少しだけ理解してくれた様子だった。


「ところで式森様……先ほどのお話ですが」


「ん?」


 見れば、リーラは怖いくらい真剣な顔で俺を見返してきた。


 他のメイドさんたちも同じく真剣な顔で俺たちを見守っている。


「式森様は、我々の次期主となって下さると……」


「――ああ。なるよ」


 俺の顔になにを見出したのか、小さく息を呑むリーラを見つめ、大きく頷く。


「なる。リーラたちの主に」


 それが、俺の行き着いた答え。


「リーラたちとともに生きるって決めたんだ」


 それが、俺のたどり着いた望み。


「これが、俺の決意だ」


 みんなをぐるっと見渡して、俺はそう微笑んだ。


 ――さあ、もう寝よう。


 ――明日は大切な日なんだから。


 ――一生に残る、大切な……。


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