第八話
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姿を想像して、マスクの下でくすっと小さく笑んだ。
念のため置手紙の一つを残し、窓から跳び立つ。
落ちたら怪我では済まされない高さだが、問題ない。
魔力と気の高速循環による身体強化が生んだ脚力は俺を大空へと導いた。
リーラの気配を探すと――なんと一番気配の入れ替わりが激しい場所、恐らく激戦区に位置した。
幸いここからそう遠くない。全力で向かえば一分も掛からない距離だ。
軽功術で木々の葉を足場に疾走する。
段々近づいてくる気配に、一つ不純物が混ざっているのに気がついた。
「げっ、まさか……」
その不純物――気配には覚えがある。一番嫌いな人の気配だ。
この場にいるはずがないのに、なぜ――とは思わない。
相手は理不尽の権化だ。彼女の存在を嫌というほど知らされた俺からすれば、なぜと思う前にやはりと諦観の念が先に過ぎった。
一際大きく跳躍し、空いていた場所に着地する。
「また君か……」
同級の顔を認めた俺は反射的に眉を潜めた。
「式森様……なぜここへ?」
「和樹さんっ!」
喜色の笑みを浮かべている少女――宮間夕菜はとりあえず無視して、リーラに向き直る。
彼女の顔には驚愕が浮かんでいた。
「そんなの助けにきたからに決まってるじゃないか」
「いけません、ここは戦場です。式森様の身にもしもがあれば」
早足で駆け寄ったリーラが俺の手を引き、どこかへ連れて行こうとする。
恐らく安全な場所へ誘導しようとしているのだろう。
しかし俺は彼女の意に反してその場に留まった。
「式森様?」
「リーラ」
俺の目はまっすぐ戦場に向いている。
アニメキャラがプリントされた服を着てカメラを首からぶら下げている男たちと、なぜかピンクのパジャマに銃というミスマッチにもほどがある服装をした少女たち。
恐らくコイツらが……。
「水銀旅団か?」
「はい。水銀旅団でも中核を担うカメラ小僧隊とピンクパジャマ隊です」
「まんまかよ……ネーミングセンス悪っ」
周りを見渡せば、負傷したメイドさんたちの姿もちらほら見受けられる。
動き出そうとしない俺に業を煮やしたリーラが手を引っ張り急かす。
「式森様、ここは危険です」
「わかってるよそんなの。百も承知だ」
だが――。
「引けられないものもあるんだ」
リーラの手をそっと離した俺は一歩踏み出した。
「俺の名は式森和樹! 彼女たち第五装甲猟兵侍女
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