第八話
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リーラたちの後方から聞こえてきた変声器特有の機械的な声。
それはリーラたちが次期主と仰ぎ見る人であり、
水銀旅団のターゲットにされている人物であり、
少女が偏執的な想いを寄せる相手でもある。
「式森様……なぜここに?」
「和樹さんっ!」
式森和樹が、戦場にやってきた。
† † †
どうやら城の近辺のあちこちで戦闘が発生しているらしい。
城内の慌しい空気と微かに聞こえる銃撃音から、また水銀旅団とやらが攻めてきたのだろうと推測した俺は、うろうろと部屋の中を落ち着きなく動き回っていた。
初めて見る顔のメイドがすぐに鎮圧される旨を伝えにきてくれたが、それでも胸の内にあるどうしようもない感情は消えてくれない。
朧な形であり、どういった感情かしっかりと認識できてないが、強いて言うならば『焦燥』と『不安』に近いそれ。
今すぐ駆け出したい気持ちと、この場に留まっていたい気持ちが鬩ぎあい、歪みとなって俺自身を蝕む、そんな奇妙な感覚が襲う。
――リーラたちは大丈夫かな……。
窓から外を見下ろせば、慌しく動き回るメイドたちの姿が見えた。
重火器を用いた戦闘だ。一瞬の油断や判断が生死を分かつ。そんな場所にリーラたちがいる。
掠っただけでも一生残る傷をその身に刻むだろう。最悪の場合、命を落とす。
ここに着てからまだ三日しか経っていないのに、もう数ヶ月は滞在しているかのような居心地の良さを感じていた。
――優しく接してくれていたメイドさんたちが怪我をしたら、あまつさえ重症を負ったら……。
いつも身近にいてくれた銀髪のメイドさんが血塗れの姿で横たわる、不意に脳裏に過ぎったのはそんなビジョンだった。
「……は……ははっ……なんだ、答えは出てたんじゃないか……」
なぜこうも不安に感じるのか。どうでもいい人だったらここまで心乱されることもない。
言い換えれば、彼女たちにそこまで気を許している証拠であり、憎からず思っている証でもある。
解は得た。
体が――心が軽い。まるで雁字搦めにしていた鎖から解き放たれたような気分だ。
「じゃあ、行くかな……」
彼女たちを助けに。そう遠くない未来の主として、なによりも一人の男として、女に戦わせて自分はのうのうと後ろに控えているつもりなど毛頭ない。
「まあ、後でリーラに怒られるかもしれないけれどね」
冷静沈着な彼女が怒りを露わにするそんな
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