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妻を見ること
第三章
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 さびしき閨の 独り寝は 風ぞ身にしむ 荻原や
 そよぐにつけて おとづれの 絶えても君に 恨みはなしに
 恋しき空に 飛ぶ雁に せめて便りを 付けてやらまし

「この今様は」
「これじゃ」
 義隆はその今様を聴いて述べる。
「この感じじゃ。しかし何故おなごの声なのじゃ」
 そして浜田は無意識のうちに述べてきた。それは漢詩であった。彼等そちらの方の素養もあったのだ。真の意味でも風流人であったのだ。
 その詩は。こうであった。

 蛍火穿白楊 悲風入荒草 疑是夢中遊 愁飲一盃酒

「今の詩はな」
 義隆には誰の感じか言うまでもなかった。
「浜田のものじゃ」
「おわかりですか」
「うむ、それで先の今様は」
「女房のものです」
 浜田は畏まって述べてきた。


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