第一章
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浜田はさらに主に対して言う。
「尼子や大内よりも中を考えた方が宜しいでしょう」
「中をか」
「そうです」
浜田の目が光る。鋭い光だった。
「今は大内の家中の方が大事であると思います」
「ふむ、わかった」
義隆はその言葉を聞いて納得したように頷いた。
「ではそうしよう。それでじゃ」
彼はさらに話を続ける。
「今度都に上洛するな」
「はい」
浜田は彼の言葉に頷く。義隆はこの時足利将軍家に呼ばれて上洛することになっていたのだ。そこで官位を朝廷に任じられることになっていた。官位は正三位、そして大宰府の大弐に任じられることになっていたのだ。これは都を慕う彼にとっては願ってもないことであった、そのことにかなり喜んでいたのである。
「それでじゃ。そなたも来るのじゃ」
「それがしもですか」
「うむ。そなたは奥方のこともあり都のことに詳しい」
ここでもまた妻のことが影響していた。
「よいな、それで」
「わかりました」
家臣としては当然の義務であった。そしてそれ以上に彼も都に憧れていた。そのことから彼もまたこの度の義隆の上洛を喜んでいたのだがそこに呼ばれたことにさらに喜びを感じたのである。彼にとっては願ってもないことであった。
そのことを家で妻であるおたけにも話す。おたけはそれを聞いて笑みを浮かべた。
「よいことですね、それは」
「うむ、まさか都に上るとはな」
彼女に話していても笑顔になる。
「思ってもいなかったが。僥倖じゃ」
「そうですね。都へ行かれるなんて」
「それでじゃ。暫く家をあける」
彼はここで無念な顔になった。
「済まぬがその間頼むぞ」
「わかりました」
おたけはにこりと笑ってそれに応えた。こうして彼は主について都に向かうのであった。そのまま義隆は都に留まるが浜田もそれに同行していた。やがて八月十五日になった。おたけはまだ都にいる夫のことを考えながら家に留まっていた。
夜空を見上げてもそこには何もない。月が見えるがその下には彼女が慕う者はいない。同じ月を見ていても夫は今都にいるのだ。
その中で慕う心は変わりはしない。その心のままに歌を詠む。その歌を筆で紙に書き留めた。
思ひやる 都の空の 月影を 幾重の雲か 立ち隔つらむ
書き留めて床に入る。床に入っても一人だ。憂いを共にして一人休むのであった。
その日義隆はもう国に入っていた。浜田も共にいる。彼等は草原に仮の泊まり場所を設けてそこで休んでいた。義隆と浜田の他に十人程いた。皆義隆が信頼する家臣達であった。
彼等は今泊まり場所で義隆を中心として酒を楽しんでいた。義隆はその中でふと月を見上げたのであった。
「のう」
そのうえで家臣達に声をかける。
「よい月じゃのう」
「はい」
「全くです」
家臣
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