番外12話『約束の時』
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ハントの師匠はジンベエ。
その二つ名はまさしく『海侠』で、つまりは正解だ。
「……」
ゆっくりと頷いたハントに、クロコダイルは愉快そうに口角を釣り上げた。ずっと見せていた嘲笑の顔ではなく、ただただ純粋に面白いものを見たときのようなどこか子供のような顔。そんな、おそらくはクロコダイルにしては珍しいであろう表情に。
「風の噂で『海侠』が人間の弟子をとったとは聞いていたが、まさか事実だったとはな……クク」
何がおかしいのか、肩を揺らしながら笑うクロコダイルに、ハントは心のどこかで『これってチャンスなのか?』と思いながらも、それ以上にやはりクロコダイルが笑う理由が気になったらしく、それを口に出した。
「そんなに面白いことじゃなくないか?」
首を傾げながらのハントの問いだったが、クロコダイルはそれを完全にスルー。
ぴたりと笑みを止めて、また戦闘時の鋭い目をして吐き捨てた。
「納得だ……認めてやる。てめぇをな」
――っ!?
クロコダイルの本気の目。
先ほどまでの戦いでもクロコダイルは決して手を抜いていたわけではない。ハントのことを強敵だと既に認めていたし、本気でハントを砂の海の藻屑にしてしまおうと技を振るっていた。
だから、変わるのはクロコダイルの戦闘力そのものではない。
変わるものは、心構え。
海賊でも最強の一角を担う王下七武海にまさに拮抗しうる実力をもった男が、海賊として目障りな敵として今クロコダイルの前に立ちはだかっている。その事実を、クロコダイル自身が認めた。
だから、もうクロコダイルはハントに対して出し惜しみをしない。
――サソリの毒は……まだ無駄だな。
クロコダイルのフックにはサソリの毒が仕込まれており、それを使う可能性を遂に視野に入れた。すぐに使おうとしないのはただ単純に使っても近接戦では確実にハントの方が上であることをクロコダイルも把握しているから。使う時は絶対のタイミング、ハントが絶対に避けることのできない状況を作ったその瞬間だ。
ハントの実力の高さは当然として、見聞色の覇気によってある程度己の動きを読まれることすらも計算に入れて、クロコダイルは一瞬でプランを立てた。
とはいえ、今考えたプランはサソリの毒を使う云々ではない。今の段階では不可能だとクロコダイルは考えている。だから、クロコダイルが考えたプランはただハントの体力を削るためのもので、それ以上のものは望まない。
ハントの魚人空手陸式はまだ若葉瓦正拳ぐらいしか受けていないクロコダイルだが、そもそもハントの拳はそれが魚人空手陸式でないただの拳でも十分に重く、クロコダイルは既にそれを何度も受けているため余裕がある状態では決してない。
だから、最小限の動きで避け
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