伊月「俺は妹のために、アンタらとやり合う。これは必然なんだよ、クソッたれが」
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対して怒鳴る。だが気にしない。俺は一つの場所に辿り着ければ良いんだ。ドリンクバーコーナーから勢いよく飛び出す。
そこで、縄で縛られて座らされている人達を無視して、右横の通路から長身の男が飛び込んでくる。右手には何か袋のようなものを持っていた。おそらく、あれは催眠薬の入った袋だろう。
だが、剣道で身に付けた瞬発力で、俺は眼前の男をすり抜ける。「くそガキが!」とか後ろから聞こえてくる。うっせぇ黙っとけ。
これに失敗したら、パニクった拳銃持ちに撃たれるかもしれない。近くの男に睡眠薬やらナイフやらで行動不能にされて、金を取られるかもしれない。
だが、持ち前のネガティブな考えはここでは捨てた。自らの意志で動き出した時点で、不安要素を呟く事は意味が無いに等しいからだ。
なんとかして目的の場所に辿り着いた俺は、そこから武器を拝借する。
それは、狭い通路の分かれ目に置いてあった、刺又である。これが、今の俺にとっての最大の武器だった。
小学校や中学校において、教師が不審者に対抗するために配備されている物で、俺自身、学校以外でこれを見るのは初めてだった。逆にカラオケ店に置かれているのが不思議でたまらない。
だが、そんな疑問も今では吹き飛び、自分の悪運の強さに驚きを覚えるだけだった。マジで、無駄な運だけはあるのな、俺。
刺又を剣道の竹刀の要領で構える。大丈夫、半年ぐらいやってなくても身体が覚えてる。
袋を構えた男がこちらに走ってくる。通路は一本道なので、こいつを撃退しないと先に進めない。
俺はこの時、自分がひどく落ち着いているという事に気付いた。何故だか、自分でも分からない。
だが、無防備に突っ込んでくる長身の男の頭に刺又の柄の部分を叩き込んだ時、俺は一つの結論を出した。
それが合っているのか、戦う理由として間違っているのかは判断出来なかった。だが、それでも今の俺には、それこそが戦う理由なのかもしれないと、素直に思えた。
長身の男がこちら側に倒れ、その先の通路の景色が一気に広がる。
縄で両手両足を縛られ、身動きが取れずにいるカラオケの客達。老若男女、土曜日という事で多くの人が来店しているのが分かる。
今回の事件の発端である犯行グループは、仲間が倒されたという事実が飲み込めずに、その場に直立していた。拳銃を持っている奴も、呆けた顔で俺を見ている。
ここからでは見えないドリンクバーコーナーには志乃や五十嵐がいる。そうだ、あいつらがまだ捕まってるんだ。
そして、それこそが、俺にとっての戦う理由になる。
仮に一人カラオケをしに来た時に、このような状態に居合わせたとしたら、俺はこんな面倒な事はしていないだろう。だって、俺一人だし。俺は皆のた
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