第二章
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第二章
「残念なことにだ」
「何故そうなったのですか」
「出し抜かれた」
部長の言葉がここで苦いものになった。
「見事にな。出し抜かれたんだよ」
「その相手は」
「あそこだ。山川コーポーレーションだ」
そこだというのである。
「そこにしてやられた」
「そうでしたか。あそこでしたか」
「わしにしてもな」
部長は苦い顔で首を捻りながらまた述べた。
「残念な話だ」
「この借りは必ず」
八誠は言葉には抑揚がなかった。だが感情は確かにそこにあった。その言葉で言うのだった。
「返します」
「やってくれるのだな」
「必ず」
彼は部長に対して断言した。
「やってみせます」
「なら頼むぞ」
「任せて下さい」
「時には悔しさをバネにすることも必要だ」
部長はこうも言った。
「それもな。必要だ」
「そうなのですか」
「つまりあれだ」
そしてここでこう言うのであった。
「臥薪嘗胆だ」
「臥薪嘗胆ですか」
「今回がまさにそうだ。頑張ってくれよ」
「わかりました」
こうして彼は仕事を出し抜かれたことを覚えそうして戦いに向かうのだった。
まずは家に戻って。妻に静かに述べた。
「部屋に巨人の選手の写真を飾ってくれ」
「部屋に?」
「それを見て怒りを思い出す」
そうするというのである。
「怒りをだ」
「巨人日本一になったのがそんなに頭に来るの?」
「それだけじゃない」
「じゃあ何をするの?」
「仕事をする」
「お仕事と巨人がどう関係があるのよ」
それを言われても妻には話がわからなかった。そして八誠はその妻に対してさらに言ってきたのである。今度言うことは何かというと。
「それで料理はな」
「お料理は?」
「レバーを頼む」
それだというのである。
「他には内臓もいい」
「レバーね」
「内臓は魚の内臓がいい」
注文をさらに付ける。
「いいな」
「苦いものばかりね」
「ああ、それでいいか」
「別にいいけれど」
妻は応えながらも首を傾げる。夫の考えがわからなくなっているのだ。
「身体にいいしね」
「じゃあそれで頼んだぞ」
「何かよくわからないけれどとりあえずそうするのね」
「ああ」
「わかったわ。それじゃあ」
こうして彼は夜に彼の大嫌いなチームの選手の写真を見て苦いものを食べる。そうして仕事での悔しさを常に記憶に止め仕事に励んだ。
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