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戦国異伝
第百六十六話 利休の茶室にてその十二

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「兵達は」
「わかっておる、そなた達も今は休め」
「出来るだけ長くですか」
「そうじゃ、そうせよ」
 次の戦まではというのだ。
「わかったな」
「必死で疲れを癒せということですか」
「そういうことになるな」
 こういうのだった。
「今はな」
「そしてですか」
「そのうえで」
「そうだ、兵糧と銭はある」
 戦にどうしても必要なこの二つはあるというのだ、本願寺との長く激しい戦いを経てもそれでもあるというのだ。
「どちらも充分にな」
「蓄えてあるからこそ」
「その二つは」
「今は具足も武器もなおしてな」
 このことも言うのだった。
「十分な状況にしてじゃ」
「再び戦うべきですか」
「今は」
「そうじゃ、休み政をする時じゃ」
 それが今だというのだ。
「御主達も身体を存分に休めよ」
「わかりました。それでは」
「今は」
「それからになる、安土でな」
 論功を行うというのだ。
「その時も楽しみにしておれ」
「安土城ですが」
 安土城の普請奉行の丹羽がここで言ってきた。
「あと少しで」
「出来上がるな」
「天主も」
「あれもじゃな」
「天主が出来てからですな」
「そのうえでじゃ」
 その天主が完成した安土城においてだというのだ。
「論功と本願寺にあれを見せるぞ」
「楽しみですな、確かに」
 林も信長のその言葉に楽しげに笑って言う。
「あれはまさに天下を定めるものです」
「まことにな」
「織田家の天下を」
「その為あれこそれと考えて作ってきたからのう」
 信長も今は笑って言うのだった。
「それを仕上げてな」
「安土で、ですな」
「それもある、では今はな」
「はい、ゆうるりと」
「休ませて頂きます」
 本願寺との長い戦をとりあえずは終えた彼等は今は休む、そのうえでこれからの戦にも備えるのだった。休息もまた彼等の務めだった。


第百六十六話   完


                           2014・1・5
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