第百六十六話 利休の茶室にてその九
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「この度の戦の論功をしたい」
「それもですな」
「うむ、したい」
是非にというのだ。
「本来は岐阜に戻った時にすべきじゃが」
「ですがそれをするには」
「少し疲れ過ぎたのう」
これは信長や家臣達だけではない。兵達もそうであるし織田家全体もだ、論功をする前に少し休む必要があった。
だからだ、今はというのだ。
「安土城が出来てからじゃ」
「それからですな」
「うむ、安土で大々的に行おう」
その論功行賞もだというのだ。
「茶器も大層用意してな」
「では茶器を」
「よいものを揃えよ」
茶の道を司る利休に静かに告げる。
「よいな」
「畏まりました」
「この戦は長かった」
実にだだった、織田家も相当な力を使った。
しかしだ、使っただけにというのだ。
「だが手に入れたものも大きい」
「加賀に紀伊に」
「国の中もな」
本願寺をかなり抑えさらに収まったというのだ。
「あらためて政を行おう」
「領内もさらに結束が強まりましたな」
「雨降って地固まるじゃな」
それでもだというのだ、長い戦の後で疲れきっただけのものは手に入れたというのだ。織田家にとって幸いなことに。
だが、だ。信長は先を見据えている目でこうも言った。
「しかしじゃ」
「まだ天下はですな」
「定まってはおらぬ、上杉はどうか」
「今能登を攻めております」
「そしてその能登がじゃな」
「最早上杉のものになるかと」
陥ちるというのだ、その国が。
「越後は只でさえ兵が多いですが」
「大きな口だからのう」
「越中も手に入れて」
「しかもじゃな」
「これで能登まで手に入れれば」
どうなるかというのだ、上杉家は。
「二百万石、五万の兵を持ちます」
「大きな兵じゃな」
「はい、武田とも並びます」
「武田は今二百四十万石」
兵は六万だ、これも大きい。
「相当じゃな」
「そしてその武田も」
「そろそろ動くか」
「時間の問題かと」
「思ったよりもな」
ここでだ、信長が言うことは。
「駿河が大きかったです」
「駿河、遠江がじゃな」
「はい、この二国が」
この二国と三河で百万石と呼ばれていた、しかし実際は。
「駿河は四十万石とのことでしたが」
「実質は六十万石だったのう」
「遠江もです」
「東の方がな」
「西は二十万石、しかし」
「東がな」
「何と四十万石でした」
「大きいわ」
合わせて百万石をだ、信玄は新たに持っているというのだ。甲斐の五十万石と信濃の七十万石にこの二国の百万石とだった。
さらにだ、上野の一部の二十万石でだった。
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