第百六十六話 利休の茶室にてその七
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「長きに渡るな」
「そのつもりか、ではな」
「それではじゃな」
「見せてもらうことを楽しみにしておく」
茶がもう一杯来た、そしてその茶をだった。
顕如は受け取った、無論信長も。そうしてその茶を飲みつつ言うのだった。
「少なくとも貴殿がどの様な者かよくわかった」
「わしもな」
お互いにだ、相手がわかったというのだ。
「よき者じゃ」
「そうであるな」
「戦にならずに済んだが」
「今となっては言っても仕方がない」
その発端は今思えは甚だ怪しい、だがそれでもはじまってしまったからにはどう言っても仕方ないというのだ。
「だがな」
「それでもじゃな」
「わかった」
ここでこう言うのだった、信長は。
「御主にわしの政をさらに見せよう」
「政をか」
「政が確かだからこそ国が長く栄える」
「それはその通り」
「では見せよう」
是非だ、そうするというのだ。
「わしの政をな」
「それでは見させてもらう」
「そしてわしが天下を長く繁栄させられるならか」
「本願寺は降る」
そうするというのだ。
「天下泰平の為に」
「わかった、ではな」
こう二人で話してだった、そして。
その話が終わってから二人はそれぞれ別れた、顕如が信長に頭を下げそのうえで彼に対して告げたのである。
「ではこれで」
「うむ」
信長もその顕如に確かな声で応える。
「また機会があればな」
「共に飲みましょうぞ」
二人は今は別れた、そしてだった。
顕如は茶室を出る、そのうえで一人茶室を出るとだった。
すぐに雑賀が彼の傍に来た、そうして彼に問うのだった。
「織田信長、如何だったでしょうか」
「悪い者ではない」
顕如は雑賀に答えた。
「いや、むしろ善き者じゃ」
「左様でありますか」
「天下人だけはある、だが」
「だが?」
「果たして武家に天下泰平を長く保てるか」
信長に言ったことをだ、顕如はここで雑賀にも言うのだった。後は本願寺の場に戻るだけだがその中での言葉だった。
「それを問うた」
「武家にですか」
「それが出来れば」
やはりあ、このことも信長に言ったことだった。
「本願寺は降ると告げた」
「織田信長にですか」
「我等は民と共にある」
親鸞の頃からそれは変わらない、本願寺即ち一向宗は民を救う為の教えでありそこから外れることは顕如も許さない。
それが為に織田家との戦では彼は民に無駄に死ぬなと命じたのだ、民の血こそ一向宗の、そして顕如が最も忌み嫌うものだからだ。
それでだ、今もこう言うのだ。
「織田家が民を長く泰平に過ごさせるならな」
「その時はですか」
「うむ、本願寺は降る」
そうするというのだ。
「我等はな」
「左様ですか、そうされますか」
「本願寺は
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