閑話その二 同盟国防委員会 国防委員室にて
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が怒鳴り返そうとして、先ほどの言葉の意味に気づく。
彼にとっては地球教大主教が本体で、ルナホールディングス代表取締役は表向きの顔でしかない。
だから、本体の直接攻撃に白旗をあげたのだ。
「同盟捜査局は、サイオキシン麻薬製造プラントの一件を地球教徒の犯行という事で公表する予定……」
その言葉をド・ヴィリエ大主教は呟いて、その違和感に気づく。
マーキュリー資源開発は?ルナホールディングスは?フェザーンは?
「すべてを地球教徒のせいにして切り捨てろ……そういう事か……」
唸るような声をあげてド・ヴィリエ大主教は正解を口にする。
トリューニヒト国防委員はすまし顔で緑髪の政策秘書が入れたお茶を口にして、続きを話す事にした。
「ええ。
アルマン『ルナホールディングス代表取締役』。
御社における子会社のコンプライアンスについて同盟は重大な懸念を持っております。
その対策については同盟議会において釈明していただけると、こちらとしても助かるのですが?」
トリューニヒト国防委員の言葉に合わせて、緑髪の政策秘書がテーブルに差し出したのは司法取引の書類。
地球教に関する捜査協力の代わりに、ド・ヴィリエ大主教の一切の罪を問わないだけでなく、マーキュリー資源開発の罪すら問わない内容にド・ヴィリエ大主教の書類を持つ手が震える。
「まぁ、晴れて無罪とはいきませんがね。
メディアでこれだけ騒がれたのですから、同義的責任を取って代表取締役は辞めてもらわないといけないでしょうが、こちらが求めるのはそれぐらいですよ。
地球教側から騒がれた時の事を考えて、別の名前と身分を用意しまょうか?」
「何故だ?
何故ここまで優遇する?」
ド・ヴィリエ大主教の疑問の声に、トリューニヒト国防委員はやれやれと肩をすくめた。
「この問題の本質が帝国にあるからですよ。
地球教の総本山たる地球は帝国辺境にあり、経済の中枢たるフェザーンを操っている。
同盟はその末端部分に過ぎません。
だからこそ、中に居る人間を確保して全容を知らないと、同盟は手を打てないんですよ」
そこまで言って、トリューニヒト国防委員は隣で控える緑髪の政策秘書を見つめた。
「実はこれ、あなたの言う『道化師』の遺言なんですよ。
彼が評議会議長時に用意した書類で色々裏技をかました上での司法取引です。
でないと、こんな段階で出せる訳無いじゃないですか」
「はは……道化師と笑っていた我らは、人形師の人形だった訳だ……」
乾いた笑い声をあげたアルマン・ド・ヴィリエ氏は、司法取引の書類にサインをする。
この三日後、地球教に対する一斉捜査と地球教徒の抵抗によって地球教は同盟におけるテロ団体に指定され、各地
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