閑話その二 同盟国防委員会 国防委員室にて
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ではなく、スキャンダルで政治的に失墜させれば、彼らは気づかなかったでしょうに」
「彼ら?」
ド・ヴィリエ大主教の不思議そうな声に、トリューニヒト国防委員は犯人を告げる名探偵のよう気分で、その名探偵たちの名前を告げた。
「730年マフィア」
思わず、ド・ヴィリエ大主教がソファーから立ち上がり、最終調査報告書が片づけ中の床に散らばる。
それに目もくれずに、彼は叫ばずにはいられなかったのだった。
「そんな馬鹿な!
彼らは、我々との融和政策と数々の利益供与を行ってきたじゃないか!
特に道化師は、我々の良い傀儡として……」
彼の言葉を遮ったのは、床に散らばった報告書を片付ける緑髪の政策秘書の淡々とした声だった。
「寄生虫を退治する上で、絶対にしないといけないことって何だと思います?」
この寄生虫が地球教なのだろうとド・ヴィリエ大主教は気づいて緑髪の政策秘書を眺めて次の言葉を待った。
彼女はテーブルに報告書を置くと、彼に目もくれずにお茶を出すためにサーバーに向かって歩き出す。
「宿主を太らせることですわ」
寄生虫を駆除する過程で宿主が死んだら意味が無い。
そして、宿主が太れば寄生虫も大きくなる訳で、見つかりやすく逃げにくくなる。
フェザーンの国力拡大が同盟と帝国の警戒心を呼び、その現状から現在の窮地を考えるとド・ヴィリエ大主教は彼ら730年マフィアがどれだけ長くかつ執拗に怨んでいたのか感じざるを得ない。
地球教の暴露とその討伐は帝国および同盟のかなりの部分に根を張っているからこそタブー視されていたのだった。
だが、先の帝国内戦でフェザーンの影響力が落ち、この間のサイオキシン麻薬暴露によってその根が分断された以上、それを躊躇う理由は無い。
既に帝国はフェザーンに対して国内資産の没収と来年度の軍事侵攻を決定しており、同盟も一企業の不祥事ではあるがその視線は冷たくなっていたのである。
帝国の侵攻を凌ぐ為にも同盟の支援は絶対に必要だった。
「大主教殿。
有意義な話をはじめてもよろしいかな?」
いつの間にか、向かいのソファーに座ったトリューニヒト国防委員と目の前のテーブルにお茶が置かれている。
しばらく己の思考に没頭、いや逃避していたド・ヴィリエ大主教は投げやり気味に声を足した。
「どうぞ」
「同盟捜査局は、サイオキシン麻薬製造プラントの一件を地球教徒の犯行という事で公表する予定です」
「それが何か?」
ド・ヴィリエ大主教の投げやりの声に、トリューニヒト国防委員が思わず苦笑する。
「あなたともあろう方が、気づいていないとは驚きですな」
「だから何を!……」
トリューニヒト国防委員の苦笑にド・ヴィリエ大主教
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