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IS<インフィニット・ストラトス> ―偽りの空―
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第四十二話 紅と白
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代表候補生が軍事行動を起こすことによる影響は大きい。

 でもこれは千冬さんの判断ではないだろう。あの苦虫を噛み潰したような表情。恐らく、上層部だろう……それが学園か政府かはわからないけれど。

 一抹の不安と不信を持ちながらも、僕は他の呼ばれた皆と一緒に指示された場所へ向かう。ちなみに束さんはいつの間にかいなくなっていた。



「では、現状を説明する」

 教師陣と僕ら専用機組が集められたのは旅館の奥にある大座敷。
 そこで大型の投影ディスプレイを用いて千冬さんによる説明が行われた。

 それは先ほどの暗号手話で僕が読み取ったことと大差ない。

 二時間ほど前にハワイ沖で試験稼働を行っていたアメリカ・イスラエル共同開発の最新鋭の軍用IS『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』が暴走し、こちらに向かっているということ。そして、あと一時間もしないうちに近隣空域に差し掛かるということ。

「学園上層部の通達により、現場で対処することになった。職員及び訓練機は海上の封鎖。そして専用機には対象の捕縛、最悪の場合は撃墜をしてもらう」

 やっぱり……!

「意見・質問があるものは挙手しろ」
「対象の詳細なスペックデータを要求します!」

 セシリアさんが具申すると、機密事項であることを念押しされてデータが公開された。
 そこには現行の第三世代の中でもかなり高い部類に入る機体スペックや、広域殲滅を目的としたオールレンジ射撃が可能な特殊武装について細かく書かれている。

 そもそも、ここからおかしい。何故こうもたやすく、データが出てくるのか。事前から知っていた? 

 僕の疑問を余所に、皆は目の前のデータを見ながら意見を交している。

「織斑先生」
「なんだ?」

 でも、それより前に僕は確かめたいことがあった。

「私たちが対応しなかった……できなかった場合の被害予測はどうなっているのでしょう?」
「……っ!」
「なっ」

 千冬さんは明らかに顔を顰めた。声を出したのは織斑君だろうか。

「……作戦時刻を過ぎて数分で対象は日本の領土上空へと差し掛かる。対象が暴走状態であるが故にその後の行動の予測はできないが……最悪の場合、第二次大戦を遙かに上回る被害が出る」

 その事実に、皆は言葉を失ったようだ。

「日本側の防衛はどうなっているのですか?」
「今回の件に関して、対応が間に合わないとのことだ」

 ということは、日本はアメリカ・イスラエルの共同軍事演習に対して知らなかった、もしくは黙殺していたということだ。そうでなければ、有事の際に対応できるように部隊を待機させるはずだ。
 学園に日本政府から要請があったのかは分からないけれど、これは学園が他国に軍事介入するのと同義だ。
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