第三章
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だがこの娘は彼が見てまず絶句するに足る娘であった。顔はまるで紙の様に白く人形の様に整っている。少し切れ長の目はまるで絵に描いた様な美しさであり小さな口は桜の様な色であった。長い髪は絹の様にしなやかでありその色はまるで夜の空の様に黒かった。彼が今まで見た女の中でもとりわけ美しいと言えた。そして絹の着物を身に纏っていた。まるで姫の様な美しさであった。
だが、だがこの娘は彼が言葉を失わせる様な娘であったのだ。何と自分の父の前まで這って来ているのだ。身体が異様に小さく感じられた。だが身体が小さいのではなかった。見れば顔も胴も普通であった。違ったのは他の者にはある筈のものがないのである。それはまるで蛭の様であった。
「どうかしたのですか?」
「今日は御前に話しておきたいことがあってな」
主は先程と同じ色の声で言った。
「これから御前の世話をしてくれる人だ」
「そちらの方が」
キヨと呼ばれたその少女はそれを聞くと顔を彼の方に向けた。うつ伏せになったままゆっくりを顔を上げてきた。
「新しいお世話の方ですね」
「そうだ」
主は頷いた。
「くれぐれも粗相のないようにな」
「わかりました。私がこの様な身体であるばかりに」
「それは言うな」
主は悲しそうな声で娘に対して言った。それは父親としての声であった。
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