MR編
百三十五話 母と娘
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になり、少しだけその画面を見るのをためらった。が、数秒してから微かに他の誰かである事を期待して、画面を見る。
結論を言うと、今回は明日奈のその微かな期待が、珍しく花開いた例だった。
「……サチ?」
画面に表示された名は、[麻野美幸]。SAOで出会い、今ではすっかり親友の一人となった一つ年上の少女の名だ。すぐに着信ボタンを押しこんで、明日奈は端末を耳に当てる。
「……もしもし?」
『あ、アスナ?えっと……ご、ごめんね?急に……』
耳元で流れた少し困ったような、けれど、彼女が無意識の内に紡ぎ出す優しく、穏やかな声を聞いただけで、思わず泣きだしてしまいそうなほどに胸の奥が温かくなるのを明日奈は自覚する。嗚咽が混じりそうになる声を必死に押さえて、明日奈は答えた。
「ううん。平気。それよりどうしたの?急に……」
『あ、えっとね……その、私にも良く分からなくて……』
「え?」
戸惑ったように言う美幸の言葉に、明日奈はより戸惑う。言わんとする事が良く分からないのだ。
『その……りょうがね?さっき急に電話をくれて……「もし暇なら明日奈にでも電話してやれ」って……どうしてなのかは、教えてくれなかったんだけど……』
「…………」
今自分の顔を見たらさぞかし間抜けな顔をしているのだろうなと、自分のことながら、明日奈はうっすらとそんな事を考えていた。
一体彼には、何処までの事が見えているのだろう?彼と初めてまともに向き合ったあの日から、時折明日奈は、リョウコウと言う男に自分の全てを見透かされているのではないかと思うような事が何度かあったが、今回の事は中々に強烈だ。
「ねぇ、サチ」
『え?』
「ちょっと遅くなっちゃうかもだけど……いまから、会えないかな?」
気が付くとアスナは、彼女にそんな提案をしていた。
────
「ごめんね?ホントに急で……」
「ううん。私から電話したんだもん。でも、ちょっと驚いたかな……アスナが夜に外で遊ぼうって言うの。珍しいよね?」
「うーん……やっぱりそうだよねぇ」
苦笑しながらそう言って、明日奈は乾いたような笑い声を洩らす。其処らじゅうに灯るLEDの電燈が彼女達の顔を四方から照らしていたが、今の彼女の笑顔は、何処となく濃い影が出ているように美幸には見えた。
「何かあった?」
「……うん、ちょっと、母さんとね……」
「そっか」
言いながら、美幸は少し辺りを見回すと、とあるカフェチェーンの指差した。
「ね、とりあえず、座ろっか」
「うん、そうだね……」
言いながら、彼女達は店の中へと入って行く。
────
「ん、美味しいねこれ」
「ホント……ちょっと高いけど……毎回違う味のが飲めるから、また来ようって思えるね」
注文した物をお互い飲みつつ、明日奈達は
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