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SAO─戦士達の物語
MR編
百三十五話 母と娘
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何故にわざわざそんな事をしようとするのか。当然、話は彼等の目的へと向かった。

簡単に言うと、彼等の目的は、自分達がこの世界に居た証を残す事らしい。

彼等……《スリーピングナイツ》はこの二年間程の間に、幾つものゲームを、コンバートし続けて旅をするギルドだったのだと言う。しかしそんな彼らが今年の春、其々の理由で別れ、ギルドが解散する事になったのだそうだ。
故に最期に、自分達が存在した証として何か一つを、彼等が回った世界の中でも最高と断言できる世界である、このALOの中に残したい。そう、彼等は語った。
その為に目指したのが、ALO内で唯一公的に、そしてALO自体が続く限り永久に個人の名前が刻まれるオブジェクトである、「剣士の碑」に、彼ら全員の名前を刻む事。そしてその条件が、彼等がレイドを組まないパーティでフロアボスを倒し切る事なのである。

そんなメンバーの挑戦に助太刀を頼まれて、其れを成功率やそのほか度外視にアスナが請け負ったのは、ある意味では彼女らしいとも言えるだろう。
結城 明日奈/アスナと言う人間は、根本的に、少々ロマンチストな所の有る少女である。勿論人格的な面に問題をきたすようなレベルではないが、それでもこう言ったおかしな出会いや、突拍子もない考えややり方を馬鹿にして笑い飛ばすで無く、すぐに前向きに楽しみ、其れを実行する為の手段をすぐに考え出す……(実際、其れがその突拍子もない考えを実行可能にしてしまう事も少なくない)程度の事はしょっちゅうだし、彼女自身そう言った事が好きなのだ。
そしてそれらの事から起きた経験を、現実(リアル)の自分にも置換させ、より自らの糧と出来る部分もまた、彼女の良き部分だろう。

しかし……そんな彼女で有ればこそ、自らの向き合わなければならない現実(リアル)へと引き戻された時、普段の彼女からは想像できないような弱さを垣間見せる事がある。

────

「う……」
もう何度目かも分からず、溢れそうになった涙をアスナは流れないように必死に抑え込む。
胸の中から溢れだしそうになるふつふつとした嗚咽を、喉の奥で押し殺す。一度流れ出したら、もう誰かが声を掛けて来るまで止まらなくなってしまう。そんな気がしたし、実際そうだろう。彼等との出会いと、新たに出来た目標によって盛り上がった気持ちは、もうすでに氷のように溶け去り、何処かへ消えてしまっていた。

その原因となったのは、アスナを縛り付けるこの世界(リアル)の象徴とも言うべき存在……アスナの母だ。母は昔から、彼女の生きる道を示してきた人物であり、同時に今となっては、その道を外れゆこうとするアスナを引き戻そうとする枷である。

厳格。
母ほどその言葉の似合う人も、現代の日本には珍しいだろうとアスナは思っていた。
大学で、経済学の教授に49歳と言
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