第十一話
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こに来るなんて思ってなかったんだよな」
「……そうよ。それに気付いたのはあなたの名前を知った時だもの」
「そうだよな。そりゃそうだ」
一度悲しそうな笑顔を浮かべた後、俊司はそのまま呟くようにこう言った。
「……ありがとな」
「えっ?」
急にお礼を言われ目を点にさせる二人。俊司は軽い笑みを浮かべて話を続けた。
「ここに連れてきてくれてありがとう。それを言いたかったんだ。だから俺は……父さんと母さんが幻想郷を守ったように、幻想郷を守ることをもう一度約束する」
俊司の言葉と目から伝わってきたのは、何重にも結ばれたつなぎ目のように固い決心だった。二人はその決心を受け、無意識に心が救われたきがしていた。やがて安心したように紫は呟く
「……あなたでよかったわ」
「何か言ったか?」
「いいえ。ありがとう」
俊司は軽く相槌を返すと部屋から去って行った。
「……一本取られたわね」
「そうね……でも、嫌いじゃないわ」
自分で言ったことがおかしくなったのか、霊夢と紫は静かに笑い始める。目の前には待ちわびていたあの日々が待っているような気がしていた。
紫達と別れてから数分後、俊司はある人物を探していた。
「……いた」
中庭を訪れると、羽衣をまとった女性が縁側にぼんやりとしながら座っていた。目線は空を向いていて、あの場所を思い浮かべているようだ。
「……少しいいですか? 衣玖さん」
静かに声をかけると、驚いた彼女は少し肩をはね上げさせてる。そのまま振り返った彼女は、なぜか安心したように溜息をこぼした。
「里中さんでしたか……」
「すいません。お取り込み中でしたか?」
「いえ……少し思いふけっていただけです」
衣玖はそう言ってまた空を見上げた。
「それで……里中さんはどういったご用件で?」
「少し……天界について聞きたいことがありまして」
そう言うと衣玖は何を思い出したのか急に暗い顔になった。無理に答えなくてもいいと気を遣ってみるが、別にかまわないと言って彼女は深呼吸をして心を落ち着かせる。
どうやら俊司の聞きたいことが彼女の嫌な思い出のようだった。
「……あの――」
「なぜ天界が革命軍の本拠地となっているのか……それを聞きたいんですね?」
俊司は何も言い返すことなく頷いた。
天界は冥界のどこかに存在している世界だ。天人と呼ばれる人間が住み、歌ったり踊ったりと遊んで暮らせる世界になっている。問題は革命軍がどうやってその場所にたどりついたのかと、どうやってそこを制圧したのかというところだ。
「……簡単な話ですよ。天人にとって……戦いは無縁だったということです」
衣玖は浮かない顔のまま、悲惨な記憶を説明し始めた。
理想郷とも言える天界に住む人々は、普段通り食ったり寝たり遊んだりの日々を過
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