8部分:第八章
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かなり懐かしい言葉である。かつて、といっても戦争直後にはまだかなりいた。作家では太宰治や坂口安吾がそうであった。役者ではざらにいた。しかし今は殆どいなくなってしまった。時代が変わってしまったのだ。もうそんな無頼派とまで言われる人間はいなくなってしまったのだ。
それは峰崎も同じだった。入社当時は上にも臆することなく楯突きあくまで己の漫画道を突き進む。そこには一切の妥協も躊躇もなかった。歳を経るにつれ忘れてしまっていたが。今それを思い出したのであった。
「よし」
三日後送られてきた原稿を見て今度は会心の笑みを浮かべてきた。
「これでいいんだ。いいぞ」
峰崎はその原稿を見てやっとよしと言った。あくまで妥協せず、氏家もそうだった。今二人の情熱と汗が一つになった。その全てのものが今作品を作っていたのであった。
氏家の漫画は爆発的なヒットとなった。しかし峰崎はそのヒットだけを見ていたわけではないのだ。もう一つのものを彼の漫画に見ていたのだ。
「俺は思い出したんだ」
自宅で妻の恵美子に対して語る。
「漫画って何かをな」
充実した笑みになっていた。その笑みで妻に語る。
「何だったの?それは」
「夢だよ」
それが彼の思い出したものであった。
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