第一話 羽瀬川小鷹と三日月夜空
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「転校生の羽瀬川小鷹です。母がイギリス人のハーフなのでこの髪は地毛です。皆さんこれからどうぞよろしくお願いします……………………
よっし!これで完璧なはずだ。」
バスの中で一人ぶつぶつと言っている。くすんだ金髪を三つ編みに結んだ少女。事情を知らない人達から見れば「なんだあのイかれた不良は?」となるかもしれない。しかし、残念。彼女はイかれてもなければ不良でも無い。今言った通り、彼女の髪は地毛だし、ぶつぶつ言ってたのは転校先での自己紹介のためだ。
彼女、羽瀬川小鷹はこれまで友達ができたことが全くと言っていいほどなかった。理由ならわかりきっている。まずは、その容姿。決して顔は悪くないのだが、その目つきの悪さとくすんだ金髪が台無しにしてしまっている。そして、もう一つあるのだが……これは別の機会にしよう。
「は〜ぁ…友達、欲しいなぁ…」
ポツリと小鷹は呟いた。別に小鷹だって好きで友達のいない非リア充になっているわけでは無い。彼女だって花の女子高生。友達とショッピングや遊園地、まだまだ行きたい所はたくさんある。なら今まで一人たりとも友達がいなかったのかと聞かれるとそうでもない。たった一人だがいたのだ。小学校の頃の話だが、学校も違ったが、二人は友達だった。そう…だった………
「あれ?何で通りすぎてるの?」
物思いにふけっていると、いつの間にかバスが目的地を通りすぎていた。いつもの小鷹なら考え事をしていたとしても、アナウンスされたら気づいていただろう。だが、気づかなかった。
「まさか…ね…」
後ろ向きな思考を無理やり脇に追いやりもう一度自己紹介を復習しようとする。そんな時だ。
『次は○○。バスが停まってから移動してください。』
アナウンスが響いた。そのアナウンスに指定されたバス停は小鷹が降りようと思っていたバス停の一つ後の名前だった。
「…………マジかよ??」
女の子らしからぬ声をあげながら小鷹は鞄を抱え急いでバスから降りる。そう。さっき彼女が危惧していたまさかが起こってしまったのだ。確かに小鷹だって、なんかつくまで長いなぁとか、考えなかったわけでは無い。さっき通りすぎた時にまさか、悪の秘密結社に誘拐されたのかとか、妹じゃあるまいしそんなあり得ないことを考えるわけもない。だが、まさかとは思わないだろう。まさか自分が
”転校するというイベントに浮かれて降りるバス停を間違える”だなんて。
小鷹にとって転校などこれまで何度も経験したものだ。その度に友達ができるかもと期待し、何度も幻滅してきた。
ーそれでも期待しちゃうボクはやっぱりバカなのかなぁ…
いつも思うのだが、それでも期待せずにはいられない。そうしないと、きっと自分が壊れてしまうと、小鷹は知っているからだ。
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