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漫画無頼
6部分:第六章
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第六章

「構わないよ」
「そうですね」
「うん。それでね」
「あっ、はい」
 彼は漫画を出してきた。見れば三十枚程ある。
「それだね」
「はい、これです」
 峰岸に答えながらその漫画を前に出す。
「宜しければ読んで下さい」
「宜しければでもなくても読むから」
 彼のおどおどとした様子にも苦笑いを向けながら答える。
「安心して」
「わかりました」
「ふん」
 そうやり取りをしたうえで彼の漫画に目を通しだした。一目見ただけで顔色が変わった。
「むっ」
 そのままどんどん先に進んでいく。最後まで一気に読んでしまっていた。
「あの」
 氏家は彼を覗き込む感じで見てきていた。そのうえで問うてきた。
「どうなんでしょうか」
「いや」
 その問いに思わず強張った顔で返してきた。
「君、持ち込みはじめてだよね」
 真摯な言葉で問う。
「そうですけれど」
 氏家は彼の問いに答える。何か不安そうである。
「描いたのも。これが最初で」
「漫画描いたの最初なのかい」
「はあ」
 そう峰崎に答える。自信がなさそうなのが見ただけでもわかる。
「やっと描き終えて。それで見てもらおうって思って」
「そうだったのか」
 峰崎は彼の話を聞いていた。聞きながら何か思案している顔であった。
「嘘ではないよね」
 氏家の目を見てまた問う。
「本当に」
「ええ、本当です」
 彼もまた答える。
「こんなことで嘘を言っても」
「そうだね。しかし信じられないね」
 首を捻って唸ってきた。
「これが最初だなんて」
「といいますと」
「ストーリーもイラストも全部君のものだよね」
「はい」
 その言葉にも答える。
「そうですけれど」
「トーンやベタも」
 かなりくどくなっているのは自分でもわかる。しかしそれでも問わずにはいられなかった。
「全部僕一人ですけれど」
「いや、これは凄いよ」
 峰崎の顔が唸るものから会心のものになった。
「凄いって?」
「はっきり言おう。最初からここまで描ける人を見たことがない」
 氏家の顔を見て述べる。
「君は天才だよ。完全なね」
「そうなんですか」
 言われても本人には自覚がない。どうにも自信に欠けるようだ。
「そうだよ。とりあえず君にはまた漫画を持って来てもらいたいね」
「もう一作ですか」
「この作品の続編でも別の連載ものの第一話でもいい」
「連載!?」
「そうだ、君みたいな逸材を放っておくつもりはない。だからだよ」
 はっきりと言い切った。何と最初の持ち込みに来た途端に連載決定である。まず有り得ないことであった。
「わかったね。それでいくから」
「嘘じゃないですよね」
 氏家は呆然としながら彼に問うた。
「連載って。最初に描いたのに」

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