魔石の時代
第一章
始まりの夜1
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事に集中して、呼ばれているのに気
付かなかったらしい。アリサの隣ではすずかが少し心配そうに私を見ていた。
「ごめん! ちょっと考えごとしてて……」
「授業終わってから、一体どれだけ考え込んでるのよ!」
「え? ええ!? もうこんな時間なの?!」
アリサの言葉に時計を見て、思わず悲鳴を上げる。自分はものの数分のつもりだったの
に、気付けば一〇分以上が経ってしまっていた。
「ってあれ? 光お兄ちゃんは?」
そこでふと気付いた。アリサとすずかしかいない。いつもなら、迎えに来てくれるのだ
けれど……。
「光君は、今日は掃除当番なんだって」
「お昼に言ってたじゃない。今日は真っ直ぐ帰れって」
そう言えば、そんな事を言っていた。慌てて窓の外を見やる。とりあえず、まだ大丈夫
らしい。ホッとしながら、鞄を背負う。
「でも、今日はこんなに綺麗な夕日なのにね」
「そうね。でも、アイツが寄り道しないで真っ直ぐ帰れって言うなら、真っ直ぐ帰った方
がいいでしょ。またびしょ濡れになるのは嫌だし、今日は習い事もあるし」
私たちのクラスの掃除当番の人に謝りつつ、急いで教室を飛び出から。廊下の窓から外
を見ながら、すずかとアリサが言った。私達が外の様子を気にしている理由は、光の真っ
直ぐ帰れという一言だった。光はとても勘がいい。真っ直ぐ帰るようにと言われた日は、
急に雨が降ったりする。この前、ついそれを忘れて寄り道し、三人仲良くずぶ濡れになっ
って途方に暮れたのは――ついでに、呆れた様子の光に迎えに来てもらったのはまだ記憶
に新しい。そんな理由もあって、私達は家路を急いでいた。
もっとも、寄り道していないとは言えないかもしれないけれど。
「まぁ、いいじゃない。近道なんだから」
先頭を歩くアリサが笑った。今私達が歩いているのは、丘を通る遊歩道だった。近道と
して良く利用している――が、実際に近道なのかは良く分からない。ただ、季節によって
色々な花が咲くこの道は、私達のお気に入りだった。何度も通った、馴染みの道だった。
「……?」
馴染みの道なのに、今日は何故か違和感を覚えた。妙に胸が騒ぐ。
(あれ……? この場所、昨日夢で見たような……)
馴染んだ場所なのだから、驚く事ではない。だが、その問題なのは夢の内容だ。魔法使いと魔物の戦い。魔法使いは魔物に敗れ――そして、確かに言ったのだ。『助けて』と。
「あ、ちょっと、なのは。どこ行くのよ?」
夢に誘われる様に、森の奥へと踏み入れる。人の手が入っているお陰で、歩くのは難しくなかった。光の忠告さえ忘れ、その場所へと急ぐ。そして、見つけた。
「酷い怪我……」
一際立派な木の根元に、一匹のフェレットが血まみれで倒れていた。誰かに飼われてい
るのだろう。首輪には赤い綺
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