魔石の時代
第一章
始まりの夜1
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鞄の中をかき回す。もちろん、そんな事で探し物が見つかる訳もない。というより、そもそもどこかに紛れ込んでしまうような大きさではなかった。
「なのは、どうしたの?」
アリサの声に、がっくりと項垂れながら答える。
「お弁当、忘れちゃった……」
今日はせっかく光が玉子焼きを作ってくれたのに。朝から楽しみにしていた分、ダメージが大きい。本当に泣きそうだ。
「もう、ちゃんと確認しなきゃダメじゃない」
「そうだぞ。忘れ物はないか、あれだけ何度も確認しただろう?」
「ううぅ……」
机に突っ伏したまま、呆れたようなアリサと光の声に、泣き声を返す。
(……え?)
今、何かおかしな事が起こったような気がする。というか、起こったらしい。顔を上げる前に、アリサの声がした。
「って、アンタどっから沸いて出たのよ!?」
「沸いてってお前な……。人をボウフラみたいに言うなよ」
顔を上げると、さも当然のように光が、アリサとそんな事を言い合っていた。
「似たようなもんでしょ。気付けばその辺にいるんだから。何で授業終わって五分と経た
ないうちにこんなところにいるわけ?」
確かに、六年生の教室からここまでは少し離れている。授業が終わってすぐに教室を出れば間に合うかもしれないが、普通はそううまくいかないと思う。
「色々とコツがあるんだよ」
とはいえ、光と一緒にいると、時々そういう不思議な事がある。お陰ですっかり慣れて
しまった。
「まぁ、いいけど。それで、何の用?」
アリサも慣れてきたのかもしれない。それ以上は問い詰めず、別の事を聞いた。
「ちょっとお間抜けさんなところも可愛い妹に届け物があってな」
何か失礼な事を言われた気もする……が、光が持っている物を見た途端、そんな事はど
うでもよくなった。
「私のお弁当箱!」
光が持っていたのは、見慣れた包みだった。間違いなく、私のお弁当箱。
「まったく、あれだけ強請っておいて忘れていくか、普通」
休みボケか?――私にお弁当箱を渡しながら、呆れたように光が言った。
「って、何? 今日はアンタが作ったの?」
「ああ。と、言っても全部作った訳じゃないが。精々唐揚げと卵焼きくらい――…」
「卵焼き!?」
アリサとすずかの言葉が重なった。何せ、光印の卵焼きは、彼女達もお気に入りだ。
「急にギラギラした目で俺を見るな。怖いから……」
何故だか慄いたように光は半歩だけ後ずさってから、軽く咳払いして見せた。
「まぁ、何だ……。少し余計に作ってあるから、一緒に食べるか?」
「いいの!?」
ぱぁっと顔を輝かせたアリサとすずかの声が重なる。
「いや、ここでダメとか言ったらお前ら食欲のスライムになりかねないし……」
何やら困ったような顔で、光が良く分からない事を言う。とはい
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