魔石の時代
第一章
始まりの夜1
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君。この前のケーキ、とっても美味しかったよ。ありがとう」
学校が見えてきた辺りで、ふとすずかが言った。
「そうか。それは良かった」
光はいつも通り素っ気なく言う。が、私には分かった。これは結構喜んでいる。
「うん! 光君って、本当に料理上手だよね」
「そうでしょ? あとね、アイスも絶品なの!」
「だよね! お姉ちゃん達もびっくりしてたよ!」
アイスに関して言うなら、ひょっとしたらお母さんより美味しいかも知れない。それくらい、光の作るアイスは美味しい。毎年夏は楽しみにしている。
「まぁ、あれは昔からよくせがまれて作ってたからな」
少しだけ遠い目をして、光は言った。というか、そんなに私はお願いしただろうか。そ
こまで多くはなかった……と思うのだけれど。
「っていうか、何でアンタ、私にだけは作ってくれないわけ?」
と、そこでアリサが、とても不満そうに光を睨みながら言った。
「いや、お前だけって訳じゃなくて、元々俺は身内にしか作ったことはないんだが。下手
なものを食わせて店の看板に傷をつける訳にもいかないからな」
「すずかには作ってあげてるじゃない!」
「それはまぁ、何て言うか……。そう遠くないうちに義妹になるだろうからな、多分」
それは、すずかの姉である忍と、私達の兄である恭也が恋人だから。
「う……。まぁ、確かにもう八割くらいはなってそうな感じだけど……」
「だろ? 最近は店の手伝いにも来てくれるんだ」
二人はとても仲が良い。だから、きっとそうなる。
「うううう……。でも、私だけ仲間外れってちょっと酷くない?」
すずかと二人、嬉しくて、でもちょっとだけむず痒い気分を共有していると、アリサが呻いた。それは確かに。彼女だけ仲間外れのようで、あまり良い気分ではない。
「お兄ちゃん……」
「分かった分かった」
私が訴えるような目で見つめると、光はやれやれと肩をすくめた。
「今度機会があったらな」
「……本当に?」
光が言うと、疑り深い目でアリサが睨む。
「本当だって。大体、そんな事で嘘をついても仕方がないだろ?」
「でも、アンタすぐに『そうだったか?』とか言い出すし」
「そうだったか?」
「アンタねえ! わざとやってるでしょ!?」
「そんな訳ないだろ?」
白々しく光が言う。けど、私も今のは絶対わざとだったと思う。そうこうしているうち
に学校が見えてきた。
「それじゃ、三人とも。また後でな」
光は六年生なので、玄関で分かれる。
「うん。それじゃまたあとでね」
来年からは別の校舎に言ってしまうので、もっと寂しくなりそうだった。
4
「ああああああっ!」
午前中の授業を終え、鞄を開いた私は思わず叫んでいた。無駄だという事は何となく分かっていたが、何度も
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