魔石の時代
第一章
始まりの夜1
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度を整えてからリビングに向かうと、父親の士朗と母親の桃子が言った。もちろん、すでに他のみんな――恭也と美由紀もいた。みんなにも挨拶をしながら、自分の席に座る。
「よしよし。トイレの中で寝たりしなかったな」
「トイレでなんて寝ないよ!」
それを待ち構えていたかのように、エプロン姿の光が朝食を運んできた。光はお母さんに次いで料理が上手だった。もちろん、お菓子だって作れる。
やっぱり男の子だからだろうか。意外だと言われる事も多いらしい。だが、家が喫茶店を経営していると言うと納得してもらえると言っていた。
(でも、それって嘘だと思うの)
お味噌汁――味付けからして、今日は光が作ったらしい――に口をつけながら呟く。
確かに家は翠屋というお店を経営しているし、ケーキも紅茶もご飯もみんな美味し
いというのも嘘ではない。だが、どういった形であれ光が店で出す料理を手伝った事
はないはずだ。もちろん、両親が止めている訳ではない。むしろ、お母さんは積極的
に彼を誘っている。私から見ても、光ならきっとお店を継げると思う。なのに、光は
どうしても首を縦には振らなかった。何故かは分からない。ひょっとしたら、本当の
子どもではないという事を気にしているのかもしれなかった。
(そんなこと、気にする事ないのに……)
実は光と私は血の繋がった兄妹ではない。私の両親も彼とは血の繋がりはない。
今でこそ私たちと同じ高町という名字を名乗っているが、本当の名字は御神――お父さんの妹さん……つまり、私にとっては叔母にあたる人の息子なのだという。でも、実際はその妹さんと彼も血は繋がっていないとも言っていた。どんな事情があって別々に暮さなけれならなくなったのかは分からないけれど……ひょっとしたら、その辺りに理由があるのかもしれない。
「なのは、味噌汁なんかボーっと眺めてると遅刻するぞ? ただでさえ今日は起きるの遅かったんだから」
光の言葉に、ハッとする。確かにいつもより遅い。慌てて他のおかずにも箸を伸ばす。味付けからして、今日は光が作ったものが多いようだ。残すなんてもったいない。もちろん、桃子が作ってくれたものだって同じだが。
「忘れ物はないか?」
少し慌ただしい朝食を終えてから、急いで学校の制服に着替える。それから急いで玄関に向かうと、すでに真っ白な制服に着替えた光が待っていた。白い服は自分には似合わない。ことあるごとにそう言っているけれど。
胸元には、肌身離さずずっとつけている剣の切っ先を模したペンダント。とても綺麗なガラス細工のようなそれは、お守りだと言う。
「大丈夫だよ!」
教科書はみんな昨日のうちに鞄に入れてある。宿題も終わっているし、提出物だってばっちりだ。進級して早々に忘れ物をする訳にはいかないと、寝る前にちゃんと確認だってしてあ
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