暁 〜小説投稿サイト〜
その魂に祝福を
魔石の時代
第一章
始まりの夜1
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(とはいえ、ネズミ……いや、フェレットはネコ科だったか。まぁ、どちらでもいいが)
 猫にもネズミにもろくな思い出がない。全く、魔物化した奴らの鬱陶しさと言ったら筆
舌に尽くしがたい。……まぁ、普通の猫なら別に嫌いではないのだが。
『で、また空ぶりか?』
 夕食を準備と片付けも含めて済ませ、自室に戻るとリブロムが言った。
「ああ。なかなか手ごわい」
 思わずため息をつく。本音を言えば、この一件にあまり時間をかけたくはないのだが。
とはいえ、なのはが起きている間に家を抜け出す訳にはいかない。下手に感づかれたら厄
介だ。それに、他にもやる事はある。
『こっちの探し物はどうだ?』
「どうかな。何せこっちは量が多い」
 リブロムを開き、追体験を行う。とある目的のため、かつての自分の力と知識を取り戻
す必要があった。だが、問題は残された記憶の量だった。何せこっちは不死の怪物だ。あ
る意味、恩師のリブロム……ジェフリー・リブロムも似たようなものだが――彼がそう
なってからは、ずっと『奴ら』との殺し合いを続けていた。つまり、記憶の多様性と言う意味では、かつての自分が圧倒的に上回っているといえるだろう。それはそのまま『偽典リブロム』に秘められた情報量へと直結していた。全てを読み解いている暇はない。のだが――
(横着するべきではないって事か?)
 肝心の必要な記憶は、一体どこに記されているのか。それを見つけるだけでも一苦労
だった。もちろん、ある程度順序立てて読みとけば知識に関しては補えるが、力となるといつどこで誰と殺し合ったかなどいちいち覚えていない。それに、
(『彼女』に関する記述は全て不鮮明だからな)
 それは、仕方がない事だった。それでもなお感じる痛みを、ため息とともに吐き出す。
不完全な記憶では、完全な追体験は望めない。まずは記憶のかけらを拾い集め、記述を復元する必要がある。もっとも。
 それでも、『彼女』の事を完全に思いだす事などできはしないのだが。
『オイ、相棒……』
 何度目かの追体験を終えると、リブロムが言った。
『あのチビが家から抜け出したようだぞ』
「なのはが?」
 聞き捨てならない言葉だった。嫌な予感が強まる。こういった時、自分の予感はまず外れない。外したければ、自ら変えるしかなかった。舌打ちをしながら、法衣――魔法使いの仕事着を引っ張り出す。
「仕方がない。探しに行くぞ」
『おう。頑張れよ』
 明らかに他人事と言った様子の相棒に、思わず肩から力が抜ける。
「お前……」
『あのチビに近づくなんざお断りだぞ。絶対嫌だからな』
 断固としてリブロムは拒否して見せた。深々としたため息が零れる。確かに、相棒は妹を随分と苦手にしているが、何もこんな時にまで。
「分かった。留守は任せる」
『任せ
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