魔石の時代
序章
ある家族の肖像
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まっているそうだ。妻と長女は、そちらにかかりきりだという。ありがたい話ではあるが、心配事もある。もちろん、三人の体の事もそうだが、まだ幼い末の娘だ。寂しい思いをしていなければいいが。
とはいえ、そちらもそこまで心配はあるまい。
「そう思うなら、恭也をどうにかしろ。あれじゃそのうちあっちも身体を壊すぞ」
妹の息子であり、我が家の次男であり――妻と二人がかりで口説き落とし、連れ帰った命の恩人がぼやく。その子を連れて帰った時の、息子たちの顔は見ものだったが。
その膝の上では、末の娘が眠っていた。つい先ほどまで話していたのだが、疲れて眠ってしまったらしい。ずいぶんと仲がよくなっているようだ。
そうだな。早く退院するさ。笑ってみせると、その子は肩をすくめて言った。
「待っている」
程なくして末の娘が眼を覚まし、息子たちは帰って行った。改めて、ずいぶんと仲が良くなったものだ。手をつなぎ歩く後ろ姿を窓から見送りながら、そう思う。だが、長男にしろ長女にしろまだいくらか思うところがあるらしい。やはり、妹の『息子』と言うのが原因だろう。特に美由紀にとってはなおさらだ。あの子は、妹の娘なのだから。
「早いところ帰ってやらないとな」
小さくなる二人の背中を見送り、呟く。
これでも俺は――高町士郎は我が家の大黒柱のつもりだった。だから、その役目を果たすためにも、いつまでもこんなところでのんびり寝ている訳にはいかない。
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