魔石の時代
序章
ある家族の肖像
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に興味があるのか?』
部屋に戻ってから、それを取りだした。改めて触ってみれば、素材は表紙は革、頁は羊皮紙のようにも感じた――が、実は人の皮だと言われたところで驚きはしなかっただろう。好き好んで確認もしなかったが。
『まぁ、ただ読むくらいなら良いけどな。本気で読み解こうとするなら、それなりに覚悟をするんだな』
その本の内容は――物語のようだった。
黒く塗りつぶされた箇所が多く、断片でしか理解できないが、魔法使いが活躍する物語のようだ。だが、娘達に読み聞かせるような夢のある話ではない。
見た目にふさわしく、血にまみれた殺し合いが淡々と、そして延々と綴られていた。
いや――これは、物語ではないのかもしれない。表紙の裏側にはこう書かれていた。
『この日記を捧げる――いずれ必ずこの空と大地の間へと還る、次の自分へ』
3
「すまない。桃子」
その瞬間に、思い浮かんだのはその言葉だった。
親友である上院議員を狙ったテロ。ボディガードをしていた自分は、犯人を鎮圧した直後に発生した爆発に巻き込まれた。
それも仕事のうちだ。覚悟はしていた。
親友が、救急隊員や医者に――そして、自分に何かを叫んでいるのは分かった。
だが、それ以上にはっきりと分かっていたのは、自分が死ぬであろうと言う事だった。
生と死の狭間を行きつ戻りつしながら、ぼんやりと医者や看護師の声を聞く。妻たちが来るまでの延命が精一杯であるらしい。
ありがたいと思う。覚悟はしていたが、未練がない訳ではない。
最期に妻たちに会えるなら――それは感謝すべき事だろう。それまでは死ぬわけにいかない。まぁ、もっとも……
すでに死んでいるのか、それともまだ生きているのか自分でも分からなかったが。
それでも必死に、この世界にしがみつき続ける。まだ、まだ。まだ死ねない。せめて最期にひと目、彼女達に。その執念だけが、自分の心臓を動かし続けていた。
「――――」
生死の狭間……地獄の入口あたりで、妻の声を聞いた気がした。返事を返す事はおろ
か、眼を開く事も出来そうにない。だが、彼女が泣いていることくらいは分かった。
せめて一言、何かを伝えたかったが――それだけの力も残されていないらしい。あがききった先に待っていたのは、やはり未練だった。
「すまない。少しいいだろうか?」
未練と共に地獄の門をくぐる直前、そんな声を聞いた。
……――
「一体、何を……?」
妻の声で目が覚めた。相変わらず身体は酷く痛むが――どうした事か。
地獄から引きずり戻されたらしい。それとも、追い出されたのか。
少なくとも、死に損なったのは間違いないようだ。
「心配しなくていい。この男は死なないし、俺の用事はすぐに済む。それほど時間は取らせないし、それが終
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