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漫画無頼
5部分:第五章
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「まあリラックスしてくれ」
 笑顔を作って青年に言う。
「ささ、座って」
「はい」
 まずは峰岸が座るのを見てから向かいの席に座ってきた。そのまま話に入る。
「お茶を」
「ああ、済まないね」
 女性社員がお茶と持って来た。峰崎はそれに礼を述べてから彼にまた顔を向けてきた。
「それでね」
「ええ」
 彼はおどおどした様子のまま彼に応える。
「まずは名乗るかな。私は峰崎幸也っていうんだ」
「編集長さんですか」
「おっ、知ってるのか」
 彼の言葉に顔を綻ばせる。
「ええ、編集後記や読者コーナーで」
「意外と有名なんだな、私も」
「読者コーナーのイラストと同じ顔なんですね」
 彼の顔をまじまじと見ながら話をしてきた。まんざらでもない感じであった。
「あれはね、三原君の力作なんだよ」
「三原先生の」
 読者コーナーのイラスト担当である。元々はギャグ漫画で今は幼児向けの雑誌メインになっているが読者コーナーのイラストも担当しているのである。
「そうだよ、どうもあれで顔が知られたみたいだね」
「何か印象に残って」
「鬼編集長としてかね」
「というか面白い存在で」
「三原君はかなり滅茶苦茶に描いてからねえ」
 その言葉には苦笑いになった。実際三原先生は彼をかなりくだけて描いている。時には鬼にしたり大魔神にしたりもしている。ホッケーマスクを被っていたりノストラダムスになったりひたことがある。
「予言とかは」
「しないよ」
 それを言われて思わず口に出た。
「できたらこんなところにはいないよ」
「ですよね」
「あの予言漫画も人気だったしね」
 少し昔を思い出した。かつて彼の雑誌で連載していた予言漫画は大反響を呼んだのである。今でもネットでカルト的な人気になっている程だ。
「あれ読んでました」
 彼ははっきりとした笑顔で言ってきた。
「子供の頃ですけれど」
「あの時は青年誌の方にいたから直接は関わっていないけれどね」
「ですか」
「そうだったんだ。けれど人気があったのは知っていたよ」
 笑いながらそう述べた。
「それでね」
「あっ、はい」
 話がやっと本題に入った。彼も顔を向ける。
「君の名前は何かな」
「氏家祐喜です」
「いや、本名じゃなくてね」
 苦笑いをして彼に返す。
「ペンネームの方ね。何ていうのかな」
「そのままです」
「ああ、そうか」
「はい。色々考えたんですけれど本名でいこうと思いまして」
「成程ね」
 その言葉を聞いてあらためて頷く。
「そういうことだったのか」
「別にいいですよね」
「ああ、別にね」
 それは構わないと言う。よくあることだしデビューしてから変えることも多い。だから今の時点ではそれに構わなかった。それに今は持ち込みの段階だ。そこまでこだ
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