1部分:第一章
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た。
「それはいいのか」
「つっぱっていても何かを見ている」
矢吹は前を見据えて語る。不良だの任侠だのを言うわりには澄んだ目をしていた。
「正面をな。そこにあるのは純愛だ」
「へえ」
大河はそれを聞いて面白そうに声をあげた。そのうえで矢吹に言う。
「わかってるんだ」
「ボロボロになってもどれだけ傷ついても裏切られても貫く。そうだろう?」
「そうさ」
大河もそれを認める。
「君も王道はわかってるんだ」
「違うんだよ、王道なんかじゃない」
「どういうことかな」
それを否定されると大河はむっとしてきた。
「純愛こそが王道じゃないか」
「それはあくまで目指すものよ」
矢吹の声がまた不敵なものになっていた。
「ただ突き進んで目指すもの。純愛にしろ友情にしろそうなんだよ。アウトローっていう中においてな」
「アウトローにこだわってばかりで見ていないな」
左門が彼に反論する。
「そうして王道を無闇に拒んでるだけじゃないか、君は」
「そういう手前は友情だの努力ばかりで他を見ていないな」
「それが全てじゃないか」
左門は自分の友情と努力を大いに肯定してきた。
「その先にあるものが光るんだよ、だからこそ」
「戯言だな」
矢吹は口の端を歪めてそれを否定する。
「光ってのはどん底から見て掴み取るものなのさ」
「光は笑いの中にこそあるんだよ」
それに巴が言い加えてきた。
「笑ってこそ世の中じゃないか」
皆が皆それぞれの意見を頑なに述べていた。ある程度は重なるところもあるが全体としては全く妥協がない。峯崎はそれを止めるのでもなくただ聞いているだけであった。しかしそのうち言ってきた。
「よし」
「どうしました、編集長」
「今日の会議はここまでだ」
彼は言った。
「いいな、それぞれの仕事に戻ってくれ」
「それぞれって」
「まだ会議の時間ですよ」
編集員達はそう彼に問う。皆きょとんとした顔で。見れば彼等はそれぞれ立ち上がり取っ組み合いになる寸前であった。その状態で彼に顔を向けたのである。
「それでどうして」
「いいからだ」
しかし彼は多くを言わせなかった。
「わかれとは言わない。だが戻れ」
「はあ」
「編集長が仰るんなら」
そう答えるしかなかった。彼等はそのままそれぞれの机か担当している漫画家のところに向かった。峰崎はそれを見送ってから一人会議室に残っていた。
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