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少年と女神の物語
第九十三話
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しかし、何のために・・・

「ほう・・・手に入れたか、その鋼を」
「!?」

 そこで、新たに鋼の神が現れた。
 マズイ・・・今この場には、敵しかいない。それも、圧倒的不利だ。
 まだ打ちきれていないが、携帯を『投函』の術で送る。少なくとも、緊急事態くらいは分かってくれるはずだ。

「うむ、それこそオレが振るうに足る剣。これで神代武双とも存分に戦える」
「武双君が目的か・・・!」

 今にも途切れそうな意識を無理やりに持たせて、その神を視る。

「こやつは?」
「グィネヴィアの同胞にございます。そして、神代さまの妹君。そうです、この子を捕らえておけば神代さまは必ず、御身と戦ってくださることでしょう!」
「そうか・・・蛇であれば、オレの力にもなろう」

 何か勝手なことを言っているが・・・それでも、もうここから逃げるのは無理だ。
 だったらせめて、合流したときに武双君に渡す情報を・・・

「・・・流動する、鋼・・・」

 そして、(ボク)の意識は、ついに途切れた。



◇◆◇◆◇



「さて・・・こ奴は、オレが預かっていてよいのだな?」
「はい。命を取られることは遠慮していただきたいですが」
「いいだろう。何にしても、力が増せばよいのだ」

 そう言ってから、自らの体の中にナーシャを入れる神。
 そのままグィネヴィアに近づいていき、草薙の剣を受け取る。

「ほう・・・予想以上に大地の気を蓄えている」
「海の底に沈んでいたことが功を奏したようです」
「幸先よいではないか、なあ」
「うむ。余たちの願いは、うまくいきそうだ」

 そう言うと、三人はその場を去って行った。
 二人は、目的の浮島攻略のため、護堂を引きこむために。
 一人は、神殺しと殺しあうため。

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