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少年と女神の物語
第九十三話
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「・・・まさか、ボクは何か勘違いしているのか・・・?」

 そう、それこそ・・・
 と、一つの考えに至ろうとしたところで巨大な力が目覚めるのを海の方から感じた。
 そちらを見ると、巨大な水柱が上がっている。

「・・・行ってみる、か」

 ボクはそう言って立ち上がり、飛翔の術でそちらに向かう。
 そして、たどり着いた先には・・・

「あら・・・ナーシャ。記憶は戻ったのかしら?」
「また君か・・・ボクたちには何か縁でもあるのか?」

 グィネヴィアが、濡れた体を魔術で乾かしていた。
 いや、ここにいるのは彼女だけではなく・・・

「・・・愛し子よ、そやつは?」
「先日にも話した、私の同胞(・・・・)でございます、小父様」

 待て、今何と・・・?

「それは都合がいい。彼に預ければ、良い効果を発揮するのではないか?」
「ああ・・・確かに。これでも、蛇の力を有しておりますから」
「・・・待て、一体何を、」
「まだ、記憶を取り戻していないのね。それなら・・・」

 そう言いながら近づいてきたグィネヴィアがなぜか怖くて、ボクは後ろに逃げようとしたが・・・術がうまく使えず、そのままつかまった。
 そして、頭に手を乗せられて・・・何かしらの、術をかけられた。
 これは一体・・・!?

「あ、あああ・・・」
「急に記憶を戻したのだもの、つらいかもしれないわ。でも、耐えるのよ、ナーシャ」

 何か言っていたが、ボクの耳には入らなかった。
 勢いよく流れ込んでくる記憶の塊。
 それらが勢い良く、現れては消えを繰り返して・・・私は、全てを思い出した。

「ボク・・・私は、神祖・・・」
「ええ、そうよ。全く、私たち神祖が神殺しの味方をするなんて・・・」

 どんどん流れてくる記憶に、混乱が進んでいく。
 神祖として様々なことをしていたらしい。それらは濃すぎる記憶で、とてもすべてを理解することはできなかった。
 そして、最後に前世の名前を思い出した。ああ、それで・・・それで、ナーシャだったのか。

「さあ、お目覚めはいかがかしら?ナーガラージャの神祖、ナーシャ?」
「私、は・・・」

 キリキリと痛む頭を押さえて、グィネヴィアをにらみつける。
 どうにか震える手でポケットから物を取り出して、『投函』の術で家に送る準備をする。このままいけば、すぐに意識を失う。少しでも、現状を・・・そして、グィネヴィアが持っている剣に、ようやく目がいった。

「それ、は・・・草薙の剣・・・」
「さすがは私の同胞ね。いい目を持ってるわ。知らないのかしら?神話とは別の、この鋼の伝説を?」

 草薙の剣の、神話とは別の伝説・・・
 壇ノ浦の戦いで、安徳天皇と共に沈んだ・・・それを、引き揚げたのか。
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