暁 〜小説投稿サイト〜
少年と女神の物語
第九十話
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を持ってるだけで、感情とかは人間と変わらないのよ?」
「そう、だったな・・・あの二柱は、同じ神を起源としつつも違う神となった」
「トール様は、北欧神話の雷神。そして戦人からの信仰を得た神様で、その名前はとっても広く知られている」
「ウッコは、フィンランド神話の主神。そして雷神でもあるが、その名はあまり知られていない」

 日本だけで考えるけど、トールと言う神のことを知らない人はあまりいないと思う。それくらいに、トールと言う神は有名だ。
 ただし、ウッコは違う。これも日本で考えるが、知っている人は少数派ではないだろうか。

 雷神と雷神。農耕の神と収穫物の神。ミョルニルとウコンバサラ。巨人と巨人。
 他にもいくつもあるこの二柱の共通点は、同じ神を起源とするからこそ存在するもの。
 それでも別の神になってしまったから・・・嫉妬したのかもしれない。

 人間で考えれば分かりやすい。同じ両親から生まれても、片方は優れていてもう片方は優れていない。そんな状況ならどうなるか。お互いに嫉妬するだけだ。
 おれも昔、姉に嫉妬していた。名前も知らない、顔ももう忘れてしまった姉だけど、それでも、こう思ったことは強く覚えている。
『同じ血が流れてるのに、何であの人だけは』、と。

「・・・少し、ウッコのことが許せそうだよ」
「そう。なら、よかったわ」

 それからしばらく雑談をしていたところで視界がぶれだした。
 あぁ・・・そろそろ生き返るのか。今回はいつもより長かったな。

「ありがとう、ママ。結構楽になった」
「ええ。また来た時に何かあったら、遠慮なく言っていいわよ。あたしは、あなたの三人目の母親なんだから」

 三人目・・・か。
 一人目には恵まれなかったけど、そのおかげでこんなにもいい母親が二人も出来た。
 人生ってのは本当に・・・分からないものなんだなぁ。

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