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八百比丘尼
1部分:第一章
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「けれど大阪程ではないですよ」
 運転手さんは苦笑いを浮かべていた。
「あんなにシビアではないです」
「そうですか」
「そうですよ。まあ美味しい料理が多いのは何よりです」
「はい」
「大阪はうどんが特にいいですよね」
「よくそう言われますね」
 東京は蕎麦、大阪はうどんと。私個人としては蕎麦も大阪のそれの方がいいと思う。東京の蕎麦を見て本当に驚いた。つゆが真っ黒なのだ。墨汁を入れているのかと思った。話には聞いていたがそれが本当だとは流石に思いはしなかった。あれは本当だったのだとその時はじめて知った。
「ここは蕎麦ですよ」
「わんこ蕎麦ですか」
 私はこれを出してニヤリと笑った。
「もう召し上がられましたか」
「勿論です」
 食べない筈がない。
「食べる前にわざと歩き回って腹を空かせてから」
「それはまたえらく気合の入ったことで」
「百杯いけましたよ」
「お見事」
 運転手さんも素直に賞賛の言葉を述べてくれた。
「そこまでいければ凄いですよ」
 岩手といえばわんこ蕎麦である。盛岡名物だがここではわりかし普通に食べられているようである。もっとも最近ではわざわざ大阪まで来てくれてやってくれているが。これは好きだ。大抵三桁にいくまで食べている。行く前に走ったり歩き回ったりして腹を空かせておくのは基本だ。
「ただ、すぐにお腹が空きますよね」
「いや、それはないですよ」
 だがこれには賛同してはくれなかった。
「それだけ食べれば満足じゃないんですか?」
「いや、お蕎麦って消化にいいですから」
 私はこう反論した。
「すぐにお腹がすいちゃって」
「そしてまた食べると」
「はい。そして飲む」
「何かこっちの食べ物を堪能してくれてるみたいですね」
「お菓子ももらってますよ」
「お酒を飲まれるのに?」
「僕の場合はそれでもいけるんですよ」
 実は甘いものも酒も両方いけるくちだ。甘い赤ワインを飲みながらケーキやチョコレートをつまむこともある。これは中々あうと自分では思っている。
「そうなんですか」
「流石に饅頭と日本酒は無理ですけれどね」
「ははは、聞いただけで胸焼けしそうです」
 そんな食べ物の話をしながら車中を過ごした。そしてすぐにその衣川に着いた。


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