天秤宮の憎悪
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ラゴーネは言った。
憎々しげに、グレイの頭に思い浮かんだ男の名を。
「“零帝”リオン・バスティア・・・それが、私の憎悪する男の名だ」
キィン!と。
剣と刀がその刃をぶつけ合い、金属音を響かせる。
「炎帝・緋紋の剣!」
“炎帝の鎧”に換装したエルザは、握りしめる剣を横薙ぎに振るう。
燃えるような剣閃をムサシは避け、己の愛刀、“妖刀・村正”を振りかざした。
「“剛”」
「くっ」
小さい呟きと共に、床が崩壊した。
間一髪のところで“飛翔の鎧”に換装して、その素早さを利用して避けていなければ、エルザは今頃床だった瓦礫と共に落下していただろう。
「飛翔・疾空の剣!」
「避・・・“連”」
続けて放たれたエルザの剣を避け、村正を素早く振るう。
が、エルザもその剣捌きを避け、先ほど開いた穴を挟んで向かい合い、構えた。
エルザは真っ直ぐにムサシを睨みつけ、目隠しをするムサシはどこを向いているのかよく解らないが、顔の向きはエルザの方を向いている。
「妖精女王、エルザ・スカーレット・・・久々の強者か」
「貴様は一体何者だ、名を名乗れ」
「災厄の道化所属、ムサシ」
短く名乗り、口を閉じる。
どうやらムサシはあまり口数が多くないようだ。
灰色の髪に侍のような服装、目は布で隠されており、手には血塗られたように赤い刀。
「“紅刀”ムサシ、その名の通り紅い刀を使うとは聞いていたが・・・ここまで紅いとはな」
「オレを知っているのか」
「私の仲間に、お前のような剣士がいる。その男に聞いた」
最近、剣士というよりシスコンとしての方が有名になっている青髪の剣士(?)を思い浮かべながら、エルザは言う。
それにムサシは薄い笑みを浮かべた。
「あの妖精女王に知ってもらっているとは光栄だな。が、お前の記憶からオレは消える。記憶するべきお前がここで死ぬからだ」
「生憎だが、私は死なない。死ぬ訳にはいかない」
騎士と剣士が、対峙する。
大きな穴の開いた床の、小さな床だった欠片が落ち―――――小さく、音を立てた。
「ハアアアアアアッ!」
「オオオオオオオッ!」
その音を合図に、エルザとムサシは飛び出した。
「私はあの男を憎悪する・・・憎悪してもしきれないほどに」
操られる重力の中で、グレイは目を見開いていた。
操られる重力の外で、パラゴーネは拳を握りしめる。
「あの男さえいなければ・・・私の願いは叶ったんだ・・・そしてそれは、結果的にお前の罪を浄化し、あの男の願いをも叶える手だった・・・」
「!」
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