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名犬駄犬
第三章
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「そうか。まあそういう時は散歩で頭の中を切り替えるのがいいよな」
「そうでしょ?だから」
「じゃあ行って来ればいいさ。ついでに買い物でも行って来たらどうだい?」
「今日の献立?」
「まだ決めてないんだろ?だったらついでにと思ってね」
「そうね、そうしようかしら」
 何となくそう返した。そこまでは考えてはいなかったのだ。
「留守番は僕がしておくから。ついでにお昼も」
「ビールは夜にね」
「わかってるって」
 実は賢一はビール好きだ。少し暇があるとすぐに飲もうとする。真美子は健康上の理由と一樹への影響を考えて賢一に昼にはビールを飲まないように頼んでいたのだ。
 こうして買い物も兼ねて散歩に出掛けることになった。まずはその前に犬小屋に向かった。
 ソーニャを連れて行った。コロも。昨日の一樹の言葉が気になって仕方がなかったのだ。
「一緒に行く?」
 コロに声をかける。見れば嬉しそうに尻尾を振っている。どうやら散歩に行くのが本当に嬉しいようである。
 こんなに馬鹿にしている自分に。そう思うといたたまれない。しかしここはそれを押さえて彼も散歩に連れて行くことにしたのである。目的は一つであった。
「本当かしら」
 コロのいいところ。それを見たかったのである。
 あの時一樹は自分を責めた。コロのことが何もわかっていないと。そしてコロとソーニャを比べて区別していると。その言葉がずっと耳に残っていたのである。
(それなら)
 真美子は心の中で呟いた。
 コロのいいところを見たい。そして自分が間違っているかどうか確かめたい。彼女はその為にコロを散歩へと連れて行くのであった。多分に自分の為であったが。
 コロの首輪を紐に繋ぐ。そしてソーニャも。二匹をそれそれ連れて散歩に向かうのであった。
 途中まではいつもと同じであった。相変わらずソーニャは気品があり凛としているがコロは情けなく、トボトボとしか感じで歩いていた。ここまでは本当に同じだった。
 それでも真美子は違っていた。コロから目を離さない。今は彼の動きに注目していた。
 買い物まではすぐに終わった。店の外にソーニャとコロを繋いで買い物を済ませる。そして店を出た。その時に彼女は最初のものを見たのであった。
「えっ・・・・・・」
 コロである。そこにはコロがいたのだ。
 彼はソーニャと一緒にいた。だが違うことをしていたのだ。
 道にあったタンポポを眺めていたのだ。ただ、のどかに眺めていた。
「コロ・・・・・・」
 ソーニャはいつも通り真美子を待っているだけだった。きちんと座って待っている。それだけだ。
 しかしコロは違っていた。花を楽しそうに見ていた。それを見て真美子は一樹の言葉を思い出した。
「そう、そうだったのね」
 見ると不思議に心が穏やかになった。コロはた
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