第二部 vs.にんげん!
第23話 いのちのねうち!
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ける。パスカは後ろ手で戸を閉めた。
「……まあ、なんだ」
パスカは書き物をするための机から椅子を引き、座った。
「まずはお疲れさん」
ウェルドは黙りこんだ。無視しようというのではない。言葉が出てこないのだ。
「ウェルド」
少しの沈黙。パスカは、慎重に言葉を選んでいた。
出てきた言葉は意外なものであった。
「本当の事を教えてくれ。お前の事を知りたいんだ」
ウェルドは顔を上げ、陰惨な目でパスカを見る。
「本当の事って?」
「お前、柱は壊せないって言ったよな。俺にはそれが本心だとは思えなかった。現にお前は、壊した」
「……で?」
「俺にはお前がわからないんだ。過去に何があって、柱を壊せないって言ったのか。あの時のお前は普通じゃなかった」
パスカが少し、呼吸を止める。
「お前の過去を聞かせて欲しい」
「前話しただろ? 昔バイレステで昆布で足を滑らせて転んで頭打って――」
「誰がそんなふざけた話を信じるか!」
ウェルドは面倒になって深いため息をつき、右手で髪をぐしゃぐしゃと掻いた。
「……最初に言っとくが、何もかもを話すつもりはないぜ」
「構わねえよ」
「バイレステに身売りされたところまでは本当だ」
右手を膝におろす。
「その後俺は……縁があって……文字を教えてくれる人に出会えた。それで主人の目を盗んで、あいた時間に代書官の仕事をした。文字が読めない人の代わりに手紙を書く仕事さ。それでこつこつ小金を貯めて……自分の身を買い戻したんだ」
信じるな。
俺の話がすべて本当だなんて思うな。
ウェルドは心の中でうめく。
声が上擦る。
「それからセフィータに戻って……隊商の用心棒やって金を稼いだ。自分の村にも何度か寄る事があって、ある時……村が滅ぼされてた」
パスカの顔を見た。彼は唇を結び、唾をのんだ。
「前に話したよな、バイレステが周囲の弱小国を更に弱らせる方法。若い世代が健全に育たなくする方法。セフィータの若者を、バイレステ人にする方法」
「……ああ」
「村を滅ぼしたのは、俺と同じくらいの時期にセフィータを出た幼なじみ達だったんだ。理由はしらねぇよ。不正に武器を蓄えてたとか何とか、噂にゃ聞いたが、どうだかね」
「家族は」
「言ったろ。八歳の時に死んだんだ」
「そっか」
ウェルドは、自分の言葉に背筋が寒くなるのを感じた。
「じゃあ、その時に家族が死んじまったってわけじゃねえんだな」
ぶるりと震える。震えて答える。
「ああ。いなかった」
裏腹に動悸が激しくなり、顔が熱くなる。
「俺に兄弟姉妹なんて――いな――」
「ウェルド?」
「やめてくれよ」
強い口調で遮った。
「思い出したくねぇんだ」
廊下からのせわしない足音。
二人がドアに目をやる。
「ウェ
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