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名犬駄犬
第一章
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に対してやはりもぞもじ、いやおどおどした声で返してきた。
「お母さんが駄目って言ったらどうするの?」
 まずはこう尋ねた。
「それは・・・・・・」
 その言葉に対して一樹はやはりおどおどしたものであった。
「素直に諦めるの?どうなの?」
 真美子は問うた。
「どうなの?言いなさい」
「飼いたい」
 一樹は俯いて言った。
「飼いたいの?」
「うん」
 そしてこくりと頷いた。
「飼いたいけれど」
「一樹は飼いたいっていうのね」
「うん」
「わかったわ」
 真美子はここでこう言った。
「それじゃあいいわ」
「えっ!?」
「ただし」
 顔をあげた一樹に対して言う。
「ちゃんと世話はすること。いいわね」
「うん」
 一樹の声は明るいものになっていた。見ればその顔も実に明るくなっていた。それを見れば彼が本当に犬をもう一匹飼いたいのがわかった。だが真美子は心の中で思っていた。
(ソーニャよりいい犬がいるかしら)
 彼女にとってはソーニャ以外の犬はどうも考えられなかった。自分でも言っているがソーニャはもう只の飼い犬ではない。家族なのだ。そのかけがえのない家族以上の犬かどうか考えていたのだ。
「で、そのわんちゃんは何時おうちに来るの?」
「一週間後」
 一樹は答えた。
「落ち着いてから渡してくれるらしいから。それまでに小屋とか用意しておくよ」
「種類は何?」
「雑種」
「雑種」
 それを聞いた真美子の顔が一瞬暗くなった。
「雑種なの」
「そうだけど。何か悪いの?」
「いえ、別に」
 まさか自分の子供の前で血筋がどうとか言うわけにもいかなかった。それが教育に悪いのは彼女も承知していた。例え犬であってもだ。彼女もそれはわきまえていた。
「悪くはないわ」
「じゃあいいんだよね」
「お母さんに二言はありません」
 これも教育だ。そう簡単に自分の考えをあれこれと変えるものではない。これも真美子の教育方針であった。だがどうも一樹は優柔不断でおどおどしたところがあるのが不安だった。
「あまり大きくならないみたいだから」
「そうなの」
 ソーニャはシベリアンハスキーだからかなり大きくなる。それを考えるとあまり大きくならないのは助かると言えば助かる。それに子供の一樹も世話がし易いだろうと思った。
「じゃあ一週間後に連れて来るね」
「ええ、わかったわ」
 夫に伝えると彼も悪い顔をしなかった。これでもう一匹犬が家にやって来ることになった。
 その一週間が経った。一樹がその犬を連れて来た。
「・・・・・・・・・」
 真美子はその犬を見てまずは沈黙してしまった。
「ねえ一樹」
「何?」
「そのわんちゃんよね」
「うん、そうだけど」
 彼はにこにこした顔でその手に子犬を抱いていた。
 見れば
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