第二章 曇天の霹靂
9.離別
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さんがあたしの声に振り返った。
いつもより少しだけ目を見開いて驚いた顔をしている。
キリュウさんの驚く顔に、あたしは内側から込み上げてくる抑えきれないものを感じた。
顔が、引き攣る。
――どうしてそんな顔をしているんですか?
あたしたちに内緒で迷宮区潜っていたことがバレたから?
後ろめたい気持ちがあったから?
「……なんでですか」
解らない。もう解らないよっ。
どうしてこんなにも自分が抑えきれないのか。
キリュウさんがあたしたちに――ううん、あたしに黙って戦ってたことがこんなにも嫌なのか。
わからない。
わかりたくない!
「なんで……ここにいるんですか……?」
「…………ルネリー、レイア、チマ……」
ポタポタと、雨が降って来た。
数メートルにまで近づいたあたしたちとキリュウさんを濡らしていく。
「なんで……こんな夜遅くに戦ってるんですか……?」
「……」
嫌だ。こんな自分は嫌だ。
なのに止められない。
この想いを止められない!
「なんで…………あたしたちに黙って戦ってたんですか!!」
「――!?」
言いたくない。こんなことは言いたくない。
「あたっ、あたしたちはキリュウさんの……仲間じゃなかったんですか!?」
やめて。やめて。
「――今、レベルはいくつ、なんですか……?」
雨が強くなってきた。
ザーザーとあたしたちに滴が叩き付ける。
後ろにいるだろうレイアたちは無言だった。
でも今のあたしにはそんなことを気にしている余裕はなかった。
「…………五十、四……」
「!!?」
――54レベル!?
あたしたちよりも、10レベル近く高い……!
凄く気まずげに口を開いたキリュウさんから聞こえた数字はあたしの想像を超えていた。
昼間のレベリングは全員に平均的に経験値が入るように調整しているはず。
つまりそれだけ、何日もこうして深夜一人でレベル上げをしていたということ。
キリュウさん一人だけで、身を危険に晒していたということ。
あたしたちに、頼らずに。
「そんなに……」
「……?」
「そんなに、あたしたちは頼りないですか? あたしたちはキリュウさんの仲間として不足なんですか……っ!?」
「ち、違っ」
大粒の滴があたしの顔を打つ。
雨で、前が見えない。
キリュウさんの顔が見えない。
彼の表情が、彼の感情が、今のあたしには見えない。
「…………俺、は……」
役に立ちたい。頼ってほしい。
お互いに背中を預けられる関係に……なりたかったのに。
「あたしは! あなたの傍に、居ちゃ駄目ですか……!!?」
「!!」
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