SAO編
第二章 曇天の霹靂
8.すれ違う想い
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イアやチマとの連携だって巧くいってる。
今日だって、ひとりで何匹もモンスターをやっつけたし。
キリュウさんに頼りきりにならずに戦えてる。
あたしは、あたしたちは。
――キリュウさんの仲間として、ちゃんとやれてるはずだよ……!
だからこそ。
「――どうして、なのかなぁ……」
「うーん」
「ふぬー?」
時刻は既に夜の十一時。いつもは寝息が聞こえるはずの室内には悩める声が三つ。
一向に解決策が思いつかず――というよりも、うんうんと唸りながらも頭の中はあの人の顔で一杯だ。論理的な思考なんて出来るわけがない。
「あーうーにょ〜……ぴょっ!」
「チ、チマ?」
「ど、どうしたの……?」
突然、バッと掛け布団を押しのけてチマが上半身を起き上がらせた。
その行動というよりも、彼女の掛け声のほうに微妙な表情をするあたしとレイア。
「あーだこーだ悩んでもしょーがないッスよ! だったら直接キリュウさんに訊いたほうが手っ取り早いッス!」
グッと拳を握りしめ、熱いことを言うチマ。たぶん、考えるのが面倒になったんだと思う。
ちょいちょいこういうことは昔によくあった。
「えええ……」
「マジ?」
それを知っているあたしたちは少し引き気味だ。
なんとなく、それを本人に聞いたらいけないって決めつけてたふうもあったし……。
「大マヂッス。ほらほら行くッスよー」
「え、今から!?」
「もう十一時だよ?」
「それこそ今更ッス。だいだい寝れないからこういう話になったんじゃないッスか」
「あぅあぅ」
「大丈夫かなぁ」
チマに背を押され、あたしたちはパジャマのままで隣の部屋へと向かった。
……コンコン。
「キリュウさ〜ん、起きてますか〜?」
ノックの二回。次に小さい声で中に話しかける。
「聞こえてない? やっぱりもう寝ちゃったんじゃないのかな?」
「うーん」
SAOのシステム上、どんなに小さい音のノックでも、必ず室内の人物には聞こえるようになっている。
逆にもし聞こえていなかったとするならば、室内の人物が音にも気付かないほど熟睡しているか、もしくは――――
「あ、あれ?」
「どうしたの、ネリー?」
寝てるのかな? と、別に異常状態として表れるわけじゃないんだけど、つい視界端のPTメンバーのHPバー表示を見た。
そして、キリュウさんのそれを見た時、ほんの一瞬HPバーが減っていたような気がした。
今はもう、あたしたちと同じ、フル状態に戻っている。
――錯覚?
そうは思ったけど、脳裏に残る減ったHPと最近のキリュウさんの横顔が重なった時、言いようもない不安を感じてしまった。
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