SAO編
第二章 曇天の霹靂
8.すれ違う想い
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性能を確かめる。
――ふむ、これは……。
今まで使っていたプレイヤーメイドの槍よりも二倍近い性能だった。
強化回数は二十八回。巧く強化すれば三十五層より上でもしばらくは使えそうだ。
「…………」
「?」
「キリュウさん? どうかしましたか?」
「……いや、何でもない。街へ戻ろう」
「は、はい!」
あわてて地図を取り出しながら現在地を確認する三人。
帰路に着きながら、俺は自分に問う。――あれから約一か月、俺は強くなれたのだろうか、と。
瞬時に答えは出た。――まだまだ、全然足りない、と。
「でね、まーたアシュレイさんがねー」
「うげっ。いやもう、ほんとあれは勘弁ッスよ!?」
「ふふ。でもチマも結構気に入ってたんでしょ?」
「…………まあ、チコッとは……」
『あはは』
彼女たちが居る、この陽だまりの如き空間を守るため。
もっと、もっと。俺は強くならなくてはいけない。
再びPoHが襲ってきたとしても、それ以上の危機が襲い掛かってきたとしても。
――この子たちを確実に守れる力を、守り通せる力を、俺は持たなくてはならない……!
「それじゃあキリュウさん。おやすみなさいー」
「おやすみなさいッスー」
「お休みなさい」
「……ああ、お休み」
三十五層主街区《リーフェン》に無事戻ってきた俺たちは、クエスト達成の報告や装備の修理、アイテムの補充などを終わらせ、早々に宿屋に入る。
夕食を食べてしばらく雑談し、就寝の挨拶を交わして男女別にとった部屋に分かれた。
「……」
時刻は午後十時八分。ルネリーが寝るのが早い関係でこの時間には三人ともベッドに入っているという。
つまり、ここから朝までは一人行動が出来るということだ。
「……行くか」
システム的に隣の部屋には聞こえないということは解っていたが、それでも極力音を立てないよう俺は静かに部屋を出た。
宿を出て、すっかり暗くなった大通りを抜け、外壁の門へと辿り着く。
門外に広がる闇夜のフィールドを前にして立ち止まり、システムメニューウインドウを立ち上げて外していた武器防具を装備し直した。
――もっと強く。もっとレベルを上げなくては……!
目指すは三十五層迷宮区。
いつも通り、朝五時までに戻ることを目標に。
「……っ」
俺は闇に染まる街道を走り出した。
◆
「やっぱり変……だよね」
明かりを消し、既に暗くなった宿の部屋。
ベッドに入って瞼を閉じても、いつもは訪れる眠気が一向に現れない。
最近はいつもこうだ。
その原因もあたしは解っている。
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