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SAO 〜冷厳なる槍使い〜
SAO編
第二章  曇天の霹靂
8.すれ違う想い
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に自信がある者でもなければ木製柄の槍は使わないらしい。
 そういった事情もあり、木製柄の槍は需要も無く、あまり作られないため数も少なかった。





 数週間前、俺は狂気のプレイヤー《PoH(プー)》と数奇な邂逅を果たした。
 SAOは所詮ゲーム。プレイヤーを殺したとしても自分は悪くない。何故なら自分はただゲームをプレイしているだけなのだから――と、そういった思想、いや狂想を持つ男。
 俺はPoHの挑発に乗って命を賭けた決闘を行い……あと一歩で死という所まで追い詰められた。
 運良く死にはしなかったが、内容的には俺の完全敗北だった。
 敗因は多々あるが、一番の理由はPoHが指摘した通り、俺がSAOという《ゲームを侮っていた》ことだろう。
 なまじ現実と同じように体を動かすことが出来るせいか、俺はこの世界を勘違いしていた。
 身体能力(ステータス)の不足も、武器防具の性能の低さも、今まで鍛えてきた武術の技で全て補うことが出来ると、そう思い込んでいた。己の腕を、気付かぬ内に《過信》してしまっていたのだ。
 それをPoHに気付かされた時、俺の中の様々な物が崩れ落ちる錯覚を受けた。
 十五年という短くない時間をかけて得た自分の武術が通じない――それは自分の今までの人生を否定されたと同義だと思ったからだ。

 ――だが。

 それでも俺が精神的に崩れなかったのは、やはりルネリーたち三人の存在が大きい。
 今まで共に戦ってきた彼女たちは既に俺の中で非常に大切な存在となっている。
 彼女たちを守り、SAOをクリアして、全員で無事に現実世界へと戻る。
 そのためには悲観している暇など無い。欠点が解った以上、早々にそれを直し、万全を期さなければならない。

 今の俺に不足していて、PoHにはあったもの。それは《レベル》と《高性能な武器防具》、そして《ソードスキルの知識》だ。
 俺の攻撃を受けた時のダメージ量の少なさとあのPoHの冷静さ、恐らく俺とPoHの間には1つ2つどころではない、少なくとも5レベル以上は確実に差があったと考えるべきだろう。
 レベルというのはつまるところ身体能力(ステータス)だ。
 そして簡単にそれを上げるためには、道具に頼る――つまり、より高性能な武器防具を揃える必要がある。

 あれから俺が力を入れているのはレベル上げと装備充実のこの二点だが、問題は俺の武器だった。
 先述した通り、現存する数も少ない中、そのうえ高性能の木製柄の槍を探し出す、ということにはだいぶ頭を悩ませた。
 しかし、三十五層が解放された時、俺はふと第一層主街区で武器屋の店主が言っていたことを思い出した。

『そういやぁ、三十五層の《迷いの森》のどっかに木造柄の強い槍を落とすモンスターが出るって聞いた事があった
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